性同一性障害者への差別

近年、性同一性障害については、その認知が広まってきています。

制服例えばですが、戸籍上は男性であっても、性自認が女性の方であると、学校や会社において、「女性用の制服が着たい」とか、「女性用のトイレや更衣室を利用したい」といった要望を持つことが当然あります。

会社側としても、このような要望に配慮しているところもあるようですが、まだまだ理解が不十分な会社としては、その要望を認めないところも多いものと思われます。

そのような社会状況の中で、会社が性同一性障害の方を解雇したという事案が裁判となりましたので、ご紹介したいと思います。

 

事案の概要

Xは、平成9年Yに雇用され、本社調査部に勤務していたところ、12年に性同一性障害の診断を受けカウンセリングを受け始め、13年には家裁で女性名への改名を認められました。

そして、平成14年1月、Yから製作部製作課ヘの配置転換を内示され、配転承諾の条件として「女性の服装で勤務する」、「女性用トイレの使用」、「女性更衣室の使用」を申し出ましたが、Yがこれを認めず2月に配転を命じたところ、Yは出社せず、辞令を破棄、返送しました。

Xは、3月4日女性の服装、化粧等をして出勤しましたが、Yは同5~8日の各日これを禁止する服務命令を発し、自宅待機を命じ、同8日には懲戒処分を検討している旨通知し、同11日に弁明聴取をしました。

その後、Xは4月17日まで出勤しましたが、就労はせず、Yは、4月17日、聴聞手続きを経て、Xを上記の理由により懲戒解雇の告知をしました。

Xの請求

Xは、これに対して、懲戒処分の差し止めや解雇後の地位保全などを申し立てました。

Yの反論

Yとしては、Xは本件服務命令に全く従わず、女性の服装等をして出社し続けたたことは、就業規則前文、3条、56条ないし58条(7号、15号、17号)に違反し、懲戒解雇事由である88条9号の「会社の指示・命令に背き改俊せず」に当たり、また、同条13号の「その他就業規則に定めたことに故意に違反し、あるいは前各号に準ずる行為のあったとき」に当たるものだとして、争いました。

 

判例 東京地決平成14年6月20日

これに対して、裁判所は以下のような決定をし、Xの請求を認めました。

「疎明資料によれば、性同一性障害は、生物学的には自分の身体がどちらの性に属しているかを認識しながら、人格的には別の性に属していると確信し、日常生活においても別の性の役割を果たし、別の性になろうという状態をいい、医学的にも承認されつつある概念であることが認められ、また、疎明資料(〈証拠略〉)によれば、Xが、幼少のころから男性として生活し、成長することに強い違和感を覚え、次第に女性としての自己を自覚するようになったこと、Xは、性同一性障害として精神科で医師の診療を受け、ホルモン療法を受けたことから、精神的、肉体的に女性化が進み、平成13年12月ころには、男性の容姿をしてYで就労することが精神、肉体の両面において次第に困難になっていたことが認められる。
これらによれば、Xは、本件申出をした当時には、性同一性障害(性転換症)として、精神的、肉体的に女性として行動することを強く求めており、他者から男性としての行動を要求され又は女性としての行動を抑制されると、多大な精神的苦痛を被る状態にあったということができる。
そして、このことに照らすと、XがYに対し、女性の容姿をして就労することを認め、これに伴う配慮をしてほしいと求めることは、相応の理由があるものといえる。」

まずは、Xが会社に対して配慮を求めたことが合理的な理由のあるものかどうかを判断し、相応の理由があるものとしました。

このようなXの事情を踏まえて、Yの前記主張について検討すると、Y社員がXに抱いた違和感及び嫌悪感は、上記…に照らすと、Xにおける上記事情を認識し、理解するよう図ることにより、時間の経過も相まって緩和する余地が十分あるものといえる。

また、Yの取引先や顧客がXに抱き又は抱くおそれのある違和感及び嫌悪感については、Yの業務遂行上著しい支障を来すおそれがあるとまで認めるに足りる的確な疎明はない。

のみならず、Yは、Xに対し、本件申出を受けた1月22目からこれを承認しないと回答した2月14日までの間に、本件申出について何らかの対応をし、また、この回答をした際にその具体的理由を説明しようとしたとは認められない上、その後の経緯に照らすと、Xの性同一性障害に関する事情を理解し、本件申出に関するXの意向を反映しようとする姿勢を有していたとも認められない。

裁判所は、YはXが女性として勤務することによって受ける不利益を回避する手段を検討すべきであったにも関わらず、それをしようとした形跡がないということを認定しています。

そして、Yにおいて、Xの業務内容、就労環境等について、本件申出に基づき、Y、X双方の事情を踏まえた適切な配慮をした場合においても、なお、女性の容姿をしたXを就労させることが、Yにおける企業秩序又は業務遂行において、著しい支障を来すと認めるに足りる疎明はない。

最後に、Xを解雇したことに正当な解雇事由があると認められないと判示しました。

 

裁判例の意義

この裁判例は、Xの申し出を正当なものと認め、企業側に性同一性障害の方に配慮するように求めた点に意義があるといえます。

このような配慮は、どの企業でも求められることであり、今後、コンプライアンスの問題としても無視できなくなってくると思われます。

当事務所では、企業におけるLGBTに関する配慮についても相談をお受けしておりますので、当事者の方でも企業の方でも、気軽にご相談ください。

 

 

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