性同一性障害者に対する差別

性別性同一性障害者という言葉は、社会的にも浸透し、要件を満たすことにより、戸籍上男性の方が女性に変更したり、戸籍上女性の方が男性に変更したりもできるようになりました。

しかし、社会的にはその偏見は残っており、不利益を受ける事案もあるようです。

そして、今回はそのような偏見によってゴルフクラブへの入会を拒否されたことについて争った裁判例を紹介します。

 

事案の概要

事案は、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律によって、戸籍上も女性へと変更をした方が、あるゴルフクラブへの入会をしようとしたところ、性同一性障害を理由に拒否され、拒否をしたことが不法行為に当たるとして訴訟を提起したというものです。

判例 東京高決平成27年7月1日の判断

この事案について、東京高裁は以下の決定をしました。

「原告X1との関係においては、被告クラブが閉鎖性を有する団体とは認められず、被る不利益も抽象的な危惧に過ぎない一方で、被控訴人の被った不利益は、直接的には、原審相原告会社が控訴人クラブの法人会員の記名者たる地位を取得できず、控訴人クラブの実質的な会員として控訴人クラブでプレーすることができないなどの経済的不利益にとどまるものではあるが、性同一性障害であること及びその治療を受けたことを理由として、控訴人クラブの定めにしたがって入会申込みの手続を行えば入会申込みを拒否されることはないであろうとの期待ないし信頼を裏切られ、いわれのない不利益を被ったこと、このような理由による本件入会拒否及び本件承認拒否によって、被控訴人は、自らの意思によってはいかんともし難い疾病によって生じた生物的な性別と性別の自己意識の不一致を治療することで、性別に関する自己意識を身体的にも社会的にも実現してきたことを否定されたものと受け止め、人格の根幹部分に関わる精神的苦痛を受けたことも否定できないことも考慮すると、被告らが構成員選択の自由を有することを十分考慮しても、やはり本件入会拒否及び本件承認拒否は、憲法14条1項及び国際人権B規約26条の規定の趣旨に照らし、社会的に許容しうる限界を超えるものとして違法というべきである。」

この高裁決定は、拒否したクラブ側が性同一性障害者の方を入会させた場合の不利益の程度と、拒否をされた方の不利益の程度を比較考量して、違法かどうかを判断しており、下記のような判断枠組みをとっています。

  1. 憲法14条1項及び国際人権B規約26条の趣旨を踏まえて、不法行為上の違法性を検討すべき
  2. 私人間においても、疾病を理由として不合理な取り扱いをすることが許されるものではない
  3. 被告は閉鎖的な団体ではなく、原告は他の施設利用に伴う混乱等も生じていない
  4. 原告の受ける不利益は経済的不利益にとどまらない
  5. 社会的に許容し得る限界を超えるものとして違法

この判決では、経済的利益と人格的利益を区別し、性同一性障害者の方がゴルフクラブ入会を拒否されたことによる不利益は、経済的利益だけではないということを明確に判示し、人格的利益に対する苦痛を重く評価しており、妥当な判決だと思われます。

 

本件判決の意義

この裁判例は、私人間であっても、不当な差別をすることで違法性を帯びることを明確にした点で大変意義のあるものです。

プライベートカンパニーであったとしても、閉鎖的な団体ではない限り、差別をすることはあってはならないものです。

昨今、企業としてコンプライアンスが声高に叫ばれていますが、言葉だけが先行しても意味がありませんので、真に法令遵守をすることが求められる時代になってきています。

なお、この裁判例はゴルフクラブ以外の場合も当てはまるものであり、例えばスポーツクラブやホテルなどでも同様に考えられるものです。

 

今後に残された課題

この裁判例では、「閉鎖的な団体ではない」ということが理由付けの一つになっており、閉鎖的な団体であったならば、入会を拒否する事が可能であったのかが検討される必要があるでしょう。

しかし、閉鎖的な団体と言っても、その団体の目的や所属する構成員などから、その入会拒否の合理性を判断すべきであり、閉鎖的な団体かどうかの判断も事案ごとの具体的事情に照らしてなされるべきといえます。

LGBTという言葉も日々のニュース等で見かける時代になりましたが、その言葉自体の理解が進んでいるかは疑問があり、現在においても本件裁判例のような事案が起きかねません。

会社としても差別的な取り扱いについて、会社内部での研修を行ってその理解を促すなどが必要になってくるでしょう。

当事務所では、LGBTに関して長年取り組んできた弁護士が相談に対応しますし、会社向けの研修などを行うこともできますので、気軽にご相談ください。

 

 

   

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