同性愛者であることを理由に施設の利用を拒むことはできるのか

LGBT近年、LGBTという言葉が浸透してきており、同性愛やトランスジェンダーなどの言葉も広まってきました。

しかし、未だにその理解が十分であるとは言い難い状況にあり、公的施設の利用の場面でもその無理解から不利益な扱いがされる可能性があります。

もう20年以上の前の裁判例ですが、同性愛者の団体が青少年の家の利用を拒まれたことに対して争った事案がありますので、その事案を少し仔細に検討していきたいと思います。

 

事案の概要

温泉同性愛者の団体Xは、Y都に対し青少年の家の宿泊利用を申し込みました。

しかし、青少年の家のS所長は申込書の受理を拒否し、さらに都教育委員会は、本件申込みについて都青少年の家条例8条1号(秩序をみだすおそれがあると認めたとき)、2号(管理上支障があると認めたとき)に該当するとして承認を拒否したという事案です。

Xの請求

Xはこれらの処分について、憲法14条、21条、26条、地方自治法244条に反し、違憲、違法であると主張し、Yに対し合計441万円余の損害賠償を求める訴えを提起しました。

Yの反論

Yは、Xの請求に対して、青少年の家においては性的行為が禁じられており、同性間においても性的行為を禁じる理由があること、条例各号の該当性の判断は専門的・技術的判断に服し、教育委員会に広範な裁量権が認められるべきであること等を主張し反論しました。

 

判例 東京地判平成6年3月30日

この事案の一審は、以下のように判示をして、Xの請求を認めました。

つまり、Yが施設利用を拒否した処分が違法だという判断をしたのです。


■要件の解釈

「同性愛者の同室宿泊を拒否するためには、・・・一般的に同性愛者が同室に宿泊すれば男女が同室に宿泊した場合と同様に性的行為に出る可能性があるというだけでは足りず、当該同性愛者においても性的行為に出るという具体的可能性がなければならないというべきである。
その場合に初めて都青年の家条例八条一号または二号の要件を充たすものというべきである(したがって、男女の場合にも、男女の同室宿泊を拒否すれば宿泊そのものができなくなることが常態の場合には、当該男女が同室宿泊をすることによって性的行為に出る可能性が具体的にあるか否かを検討することが必要となろう。)。」

■具体的な当てはめ

「これを本件についてみるに、そもそも、都教育委員会は、右具体的可能性の有無を当初から問題とせず、単に、原告が同性愛者の団体であり、「同性愛者」と「男女」とは同じであるとの考えのもとに本件不承認処分をなしたものであって、既にこの点において違法たるを免れないが、仮にこの点をしばらくおくとしても、原告について、本件使用申込当時そのメンバーにおいて府中青年の家に同室宿泊をした場合性的行為に出る可能性が具体的にあったことを認めるに足る証拠はない。」

この一審の判断は、Y側の裁量を限定的に解して、そのうえで具体的な可能性がある場合でないと利用拒否はできないとして、今回はそのような具体的可能性があるとはいえないとしました。

 

判例 東京高判平成9年9月16日

この事案の二審も、以下のように判示してXの請求を認めました。

「都教育委員会が、青年の家利用の承認不承認にあたって男女別室宿泊の原則を考慮することは相当であるとしても、右は、異性愛者を前提とする社会的慣習であり、同性愛者の使用申込に対しては、同性愛者の特殊性、すなわち右原則をそのまま適用した場合の重大な不利益に十分配慮すべきであるのに、一般的に性的行為に及ぶ可能性があることのみを重視して、同性愛者の宿泊利用を一切拒否したものであって、その際には、一定の条件を付するなどして、より制限的でない方法により、同性愛者の利用権との調整を図ろうと検討した形跡も窺えないのである。
したがって、都教育委員会の本件不承認処分は、青年の家が青少年の教育施設であることを考慮しても、同性愛者の利用権を不当に制限し、結果的、実質的に不当な差別的取扱いをしたものであり、施設利用の承認不承認を判断する際に、その裁量権の範囲を逸脱したものであって、地方自治法二四四条二項、都青年の家条例八条の解釈適用を誤った違法なものというべきである。」

二審も一審と同様に、Y側に裁量は認め、同性愛者の特殊性からくる不利益をしっかり考慮しなさいという立場を取りました。

そして、この事案においてそのような考慮がされていないため、違法であると判断したのです。

 

 

高裁判決の言う特殊性とは

ここでいう同性愛者の特殊性というのは分かりづらいですが、下記のように、一審がそれをすでに示唆していたところです。

同性愛者が青年の家における同室宿泊を拒否された場合には、同性愛者は青年の家に全く宿泊することができなくなる。
なぜなら、男女の場合には、その同室宿泊を拒否されても、通常、別々の部屋に分かれて宿泊することができるのに対し、同性愛者の場合は、相当数の個室でもない限り、別々の部屋に分かれて宿泊することはまず不可能であるからである。
これは、男女の場合に比べて著しく不利益であり、同性愛者が青年の家の利用権を奪われるに等しいものである。

つまり、同性愛者が同じ部屋に泊まった場合に性的行為に及ぶ可能性があるとすれば、施設利用をさせるためには一人に一つの部屋を使わせることになるのですが、これは現実的ではなく、結果として同性愛者の方の利用をほとんど拒否するような結果になると言っているわけです。

 

 

本判決の意義

本判決は、日本において、性的指向を理由として公権力が同性愛者を差別的に扱ったことが裁判所で争われた唯一の事案と言えます。

この判決から読み取れることは、公権力は原則として裁量があるとしても、できる限り他の代替案も含めて考慮しなくてはならないと言うことです。

残念なことではありますが、無理解などから公権力により不利益な取扱を受ける場合もありえますので、その場合はまず弁護士に相談してください。

当事務所では、この問題に長年取り組んできた弁護士が相談の対応をさせていただきますので、気軽にご相談ください。

 

 

   

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