建物の相続税評価額の計算方法とは?【税理士・弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

当事務所には、相続問題を専門に扱う相続対策チームがあり、建物の相続税評価額の計算方法について、多くのご相談が寄せられています。

このページでは、税理士の資格を持つ弁護士が建物の相続税評価額の計算方法について、わかりやすく解説いたしますので、ぜひご参考にされてください。

 

 

建物の相続税評価額の計算は利用方法で異なる

建物の相続税の計算方法は、その建物を①故人が自宅として利用していたのか、②賃貸していたのか、③賃貸アパートとしていたのかで異なります。

建物の利用状況 相続税評価額の計算式
自宅の場合 固定資産税評価額 × 1.0
賃貸の場合 固定資産税評価額 ×( 1 - 借家権割合)
賃貸アパートの場合 固定資産税評価額 ×( 1 - 借家権割合 × 賃貸割合)

以下、それぞれの計算方法についてご紹介します。

 

自宅の相続税評価額

自宅(自用家屋)の相続税評価額の具体的な計算方法は、次のとおりです。

自用家屋の評価額 = 固定資産税評価額 × 1.0(評価倍率)

※ 家屋の評価額の計算に用いる評価倍率は、現在は1.0倍となっています。
※ 家屋と構造上一体となっている設備等については、その家屋に含めて評価をします。

具体例 自用家屋の評価

固定資産税評価額:2000万円

2000万円 × 1.0(評価倍率)= 2000万円

 

賃貸していた場合の相続税評価額

第三者に貸していた場合には、次の算式となります。

貸家家屋の評価額 = 固定資産税評価額 ×( 1 - 借家権割合(※1))

(※1)借家権割合は、現在は全国一律30%に設定されています。

具体例 賃貸家屋の相続税評価額

固定資産税評価額:5000万円

5000万円 ×(1 − 0.3)= 3500万円

 

賃貸アパートの相続税評価額

貸家アパートの場合には、次の算式となります。

貸家アパートの評価額 = 固定資産税評価額 ×( 1 - 借家権割合(※1)× 賃貸割合(※2))

(※1)借家権割合は、現在は全国一律30%に設定されています。
(※2)賃貸割合は、原則として、課税時期において実際に賃貸されている部分の床面積に基づいて算定します。

具体例 賃貸アパートの相続税評価額

総戸数:10部屋のアパート
床面積:各部屋20㎡で同じ

このアパートで、相続が開始した時点で10部屋中2部屋が空室だったとします。

すると賃貸割合は次のようになります。

(8部屋 × 20㎡)÷(10部屋 × 20㎡)= 0.8

したがって、賃貸割合は、80%となります。

なお、一時的に空室となっている場合は、その部分の床面積を実際に賃貸されている部分の床面積に加えて算定して差し支えありません。

この賃貸アパートの固定資産税評価額が1億円だとした場合、相続税評価額は次のようになります。

1億円 ×(1 − 0.3 × 0.8)=  7600万円

 

 

マンションの相続税評価額

建物の相続税評価額の計算方法を説明しましたが、分譲マンションの場合は土地を共有しているため計算方法が違ってきます。

 

マンションの建物部分の相続税評価額

建物部分については、一戸建てと同じで、固定資産税評価額で相続税が計算されることとなります。

 

マンションの敷地の相続税評価額

マンションの敷地は区分所有者で権利を共有しており、その権利の割合は「持分割合」で示されます。

そのため、土地の価値は下の計算式にあてはめて算出します。

マンションの土地の相続税評価額 = 路線価(1㎡当たり)× 土地の面積(㎡)× 持分割合

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相続税評価額の調べ方

上述のとおり、建物の相続税評価額は、固定資産税評価額をもとに各利用状況に応じた計算式にあてはめて算出されます。

したがって、固定資産税評価額を調べれば、相続税評価額を算出することが可能です。

では、固定資産税評価額は、どのようにすればわかるのでしょうか。

 

固定資産税の課税明細書を確認する

固定資産税評価額は、毎年春ころ役場から送付されてくる、固定資産税の「課税明細書」に記載されています。

参考:横浜市HP|課税明細書の見方

したがって、まずは固定資産税の課税明細書の有無を確認しましょう。

 

 

相続税の計算方法

相続税の計算は、建物などを個別に計算するわけではなく、すべての遺産の相続税評価額を合計して算出します。

相続税の計算は、とても複雑で、一般の方が自分で計算するのは大変です。

当事務所では、相続税の概算をシミュレーションできる計算機をホームページ上に公開しております。

相続税の概算を計算したい方はぜひ御覧ください。

 

 

相続税の節税対策

相続税は、遺産が大きくなればなるほど税額の負担も大きくなる税金です。

せっかく築いてきた財産ですので、少しでも多く、ご遺族に残してあげたいと思われるのは自然な考えです。

相続税は、専門家のサポートを受け、早期に対策することで節税するできる可能性があります。

 

 

よくある質問

建物の相続税評価額は築年数で影響を受ける?

相続税評価額は、上述したとおり、固定資産税評価額をもとに算出されます。

この固定資産税評価額は、築年数が長くなると(建物が古くなると)、金額が低くなっていきます。

具体的には、東京都の木造建物の場合、築年数が1年の場合は、経年減点補正率が0.8ですが、これが徐々に下がっていき、築27年以上では0.2となります。

木造以外の場合は築年数が1年の場合は、経年減点補正率が0.9579ですが、これが徐々に下がっていき、築45年以上では0.2となります。

参考:法務局|東京法務局新築建物課税標準価格認定基準表

つまり、木造でもそれ以外でも、経過年数に応じた減価率が適用されることとなります。

木造の場合はその期間がそれ以外の建物よりも短く、築27年以上でもっとも低い20%の価値となります。

木造以外の場合は、築45年以上で20%となります。

 


未登記建物の相続税評価額は?

未登記建物であっても、役場が調査し、所有者と判断した人に対して、固定資産税の納税通知書を送付している場合があります。

その場合、上記と同様に固定資産税評価額を算出可能です。

また、未登記建物を相続した場合、登記をしなければなりません。

そのため、司法書士などの専門家にご相談されることをお勧めいたします。

 

 

まとめ

以上、建物の相続税評価額の計算について詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。

建物の相続税の計算方法は、その建物を①故人が自宅として利用していたのか、②賃貸していたのか、③賃貸アパートとしていたのかで異なります。

これらの利用状況別の計算方法は上述したとおりです。

しかし、相続税の計算は、建物などを個別に計算するわけではなく、すべての遺産の相続税評価額を合計して算出します。

相続税の計算は、とても複雑で、一般の方が自分で計算するのは大変です。

また、相続が発生すると、相続税だけではなく、遺産分割をしなければなりません。

そして、遺産分割においては、その査定がとても重要となります。

そのため、相続に関するお悩みをお持ちの方は、相続問題に精通した専門家にご相談されることをお勧めいたします。

この記事が相続問題に直面されている方にとってお役に立てれば幸いです。

 


 
 


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