相続の相談はどこにすべき?各士業や銀行の違いについて解説


弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA


相続の相談先は多種多様

相続と一口に言っても、遺言書、遺産の調査、遺産分割、相続放棄、家族信託、相続税など、さまざまな問題があります。

他方、相続問題をサポートする専門家は、弁護士の他にも、税理士、司法書士、行政書士、その他各種団体などが存在します。

素人の方は、そもそもどこに相談したらよいかを迷われると思います。

そこで、ここでは相続問題をどこに相談すべきかを詳しく解説いたします。

 

 

弁護士に相談した方が良い場合

基本的には、相続の問題は、すべて弁護士に相談されることをお勧めいたします。

なお、相続税については、相続税に詳しい税理士に相談されることをお勧めいたしますが、現在、相続問題に特化した法律事務所の中には税理士資格を有する弁護士が在籍していることがあります。

そのような場合、その法律事務所に行けば、相続税を含めた相続問題すべての相談に対応できるのでご負担を減らせるでしょう。

 

相続問題で弁護士ができること

弁護士の職務は、法律相談・交渉・調停手続、訴訟対応、遺言書や協議書作成などの法律事務全般であり(弁護士法第3条)、相続に関するすべての法律問題に対応できます。

これに対して、弁護士でない者が法律事務を扱うのは、法律で原則として禁止されています。

【根拠条文】

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

引用元:弁護士法|電子政府の窓口

 

このように法律が弁護士以外の者の法律問題への関与を規制しているのは、弁護士以外の者が法律事務に関与すると、間違った対応や詐欺的な行為等により深刻な事態に陥る可能性があるからです。

弁護士でない者が相続問題等の法律事務を扱えるのは、法律で例外的に定められた場合に限ります。

これをまとめたのが下表です。

弁護士 行政書士 司法書士 税理士 各種団体等
法律相談 × × × ×
遺産分割協議書 ×※1 ※3 × ×
遺言書 ×※2 ×※4 × ×
相続放棄 × ※5 × ×
交渉代理 × ×※6 × ×
調停代理 × × × ×
訴訟代理 × × × ×
登記 × × ×
相続税 × × ×
※1:遺産分割協議書は、①相続全般に関する一般的な説明は行政書士も可能ですが、②どのような内容の遺産分割協議書にするか等の個別具体的な相談については、法律相談となるので弁護士しかできません。

※2:遺言書の内容をどのようにすれば良いかについての相談は法律相談となるので、行政書士の業務範囲ではありません。

※3:司法書士はすべての遺産分割協議書の作成はできませんが、遺産の中に不動産があり、相続登記を行う場合は許されます。

※4:遺言書の内容をどのようにすれば良いかについての相談は法律相談となるので、司法書士の業務範囲ではありません。

※5:司法書士が相続放棄の手続については、書類作成の代理権しかないため、家裁から相続放棄照会書・回答書などが送られてきた場合、本人が対応しなければなりません。

※6:司法書士は140万円以下の請求の民事事件の代理人にはなれますが、遺産分割協議など家事事件の代理人にはなれません。

 

上の表から明らかなとおり、相続問題において弁護士はすべての業務が可能ですが、弁護士以外の者は、ほとんどの業務ができません。

例外的に、不動産の登記を移転する場合は司法書士、相続税の申告を行う場合は税理士もサポートが可能であり、その分野に限ってはプロといえます。

弁護士は、登記を行ったり、相続税の助言も可能ですが、このような手続的な対応については知り合いの司法書士や税理士を紹介するなどしている場合が多いと思います。

これは、弁護士が法的に対応できないのではなく、あえて取り扱っていないからです。

以上から、相続問題については、まずは弁護士にご相談すべきでしょう。

また、弁護士の中で、相続問題を専門としている弁護士は決して多くはありません。

そのため、相続問題に強い弁護士に相談することが重要となります。

 

 

税理士に相談した方が良い場合

税理士は、上記のとおり、相続税の相談や申告業務に対応できます。

ただ、相続問題の中で、相続税が占める割合は一部に過ぎません。

また、相続税の申告の前段階として、遺産分割協議など様々な法的問題を解決しなければなりません。

そのため、可能であれば、税理士資格をもつ相続専門の弁護士にまずは相談されることをお勧めいたします。

そのような弁護士であれば、相続税についての助言も可能となります。

そして、相続税の申告が必要な場合は、その弁護士が連携している税理士を紹介するなどして、的確に対応することで、依頼者の負担を減らすことができます。

 

 

司法書士に相談した方が良い場合

司法書士はすべての遺産分割協議書の作成はできませんが、遺産の中に不動産があり、相続登記を行う場合は許されます。

また、相続放棄については、司法書士には書類作成の代理権しかないため、家裁から相続放棄照会書・回答書などが送られてきた場合、本人が対応しなければなりません。

さらに、司法書士は、相続登記への対応が可能です。

しかし、相続問題では、相続登記の前提として、解決しなければならない法的問題がある場合、弁護士でなければ対応ができません。

そのため、司法書士に相談した方よい場合は、その他の問題が解決済みの状況で、相続登記のみ実施すれば良いようなケースになると考えられます。

 

 

行政書士に相談した方が良い場合

行政書士への相続問題のご相談はお勧めできません。

遺産分割協議書について、①相続全般に関する一般的な説明は行政書士も可能ですが、②どのような内容の遺産分割協議書にするか等の個別具体的な相談については、法律相談となるので弁護士しかできません。

また、遺言書については、その内容をどのようにすれば良いかについての相談は法律相談となるので、行政書士の業務範囲ではないと考えます。

仮に、法的に行政書士に遺言書の作成が認められても、遺言書は後々の紛争(裁判など)を予防するために重要なものです。

例えば、遺言書の有効性が問題となったとき、その争点に関する裁判例に精通している必要があります。

紛争予防という観点からは、裁判実務に精通した弁護士へのご相談をお勧めいたします。

 

 

銀行に相談した方が良い場合

銀行は、顧客の預貯金等の管理を行っているため、その流れから相続についてサポートを行っているようです。

しかし、銀行は、上記の各士業に認められた独占業務を取り扱うことはできません。

そのため、銀行が相続の相談を受けたり、遺言書を作成したりすることは非弁行為として弁護士法に違反する可能性があります。

なお、銀行内に、社内弁護士(銀行から雇用された弁護士)がおり、その弁護士自身が相続の相談を受けているのであれば問題はないと考えられますが、実例は少ないでしょう。

また、信託銀行の場合は、信託業務を行うことが法律上認められているため、信託のサポートを行うことは法律上問題ありません(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律)。

しかし、遺言書の作成や遺言執行などの業務は信託業務ではなく、「法律事務」に該当するため、これをサポートするのは非弁行為として法律に違反する可能性があります。

したがって、資産運用や管理については銀行の業務範囲となりますが、相続に関する相談であれば、銀行への相談はお勧めできません。

 

 

まとめ

以上、相続問題の相談先について、各士業等の特徴に分けてくわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。

相続と一口に言っても、様々なサポートが必要となりますが、法律上、問題なく実施できるのは弁護士となります。

しかし、弁護士の中で、相続問題を専門とする方は決して多くはありません。

そのため、相続問題については、相続に強い弁護士を探して、ご相談されることをお勧めいたします。

この記事が相続問題に直面されている方にとってお役に立てれば幸いです。

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