財産分与の請求権を相続できるか?【弁護士が事例で解説】


弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

事案

先日両親が離婚をしたのですが、財産分与は離婚後に話し合うことになっていたそうです。

しかし、両親が話し合おうとしたその矢先、母は交通事故で亡くなってしまいました。

相続人は子供の私だけだったのですが、私は母の父に対する財産分与請求権を相続できるのでしょうか。

弁護士の回答

考え方は分かれていますが、少なくとも清算的財産分与及び慰謝料的財産分与の請求権については相続できるとされています。

一方、扶養的財産分与請求権については、相続されないと考えるのが一般的です。

離婚後の母の死亡による財産分与請求権の相続

財産分与の意義

一口に財産分与と言っても、以下の3つの要素が含まれていると言われています。

3つの要素
  1. ① 清算的財産分与
  2. ② 慰謝料的財産分与
  3. ③ 扶養的財産分与

①は、婚姻期間中に夫婦で形成した夫婦の共同財産を離婚の際に清算するという要素であり、純粋な財産的問題であるといわれています。

②は、離婚原因をつくった場合に、その原因に対する慰謝料的な要素であり、これも財産的問題とされています。

③は、離婚後は夫婦ではなくなるので、扶養義務はなくなりますが、一方が主婦であった場合など収入がすぐに得られない場合などに、一定の期間の扶養の面をもった財産分与が認められるとされています。

これは、夫婦関係という身分関係から生じるもので、財産的な問題ではなく、妻ないし夫であることから認められた一身専属的権利と考えられています。

財産分与請求権は相続されるのか

財産分与請求権には、上記の3つの要素がありますが、相続にあたってはその要素ごとに考えるのが一般的です。

まず、①については、夫婦で築いた財産を分けるというものですから、財産的な権利であり、相続されます。

次に、②についても、慰謝料という金銭の問題なので、基本的には相続されると考えられます。

最後に、③ですが、扶養というのは夫婦関係という身分に基づいて認められるものですので、一身専属的であるということは前述のとおりです。そのため、相続はされないと考えるのが一般的です。

もっとも、大分地判昭和62年7月14日の裁判例は、③についても、相続されるとしていますので、必ずしも相続されないということではないでしょう。

これらの要素については、理論上は分けていますが、切り分けるのが難しい面もあります。また、財産分与は様々な法的・事実の問題があり、専門的知識が不可欠です。

 

財産分与のポイント

上記のとおり、財産分与については、3つの類型がありますが、財産分与というと一般的には①清算的財産分与のことであり、実務上は他の2つはあまり問題となりません。

したがって、以下、①清算的財産分与を前提として、ポイントとなる点を解説します。

point①対象となる財産をもれなく調査する

財産分与は、まず、その対象となる財産を洗い出すのが重要です。

そのために、夫婦(事例のケースだとご両親)の財産、具体的には、預貯金、不動産、保険(解約返戻金)、株式等、自動車、高価な動産(貴金属等)をすべて調査します。

point②適切に評価する

対象財産を洗い出したら、次に、評価します。

特に、不動産や非上場会社の株式は、時価を適切に査定することが重要となります。

なお、不動産については、固定資産税評価額や相続税評価額ではなく、時価(売却時の見込額)ですので誤解がないようにされてください。

point③分与方法を協議する

財産分与の対象財産を確定し、価額を算出したら、誰が何を取得するのかという点について協議が必要です。

財産分与は基本的には2分の1という暗黙のルールがあります。

例えば、対象となる財産の総額が1000万円の場合、500万円を相手に請求するということになります。

 

 

まとめ

以上、財産分与請求権を相続できるかという問題について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか?

財産分与については、3類型がありますが、精算的財産分与や慰謝料的財産分与については相続できると考えられます。

そして、精算的財産分与については、対象財産の調査と評価、また分与方法が重要なポイントとなります。

そこで、財産分与に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度、家事事件専門の弁護士にご相談されることをおすすめします。

 

 


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