コロナの影響で養育費はどうなる?【弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA


収入が激減するなどによって事情変更に該当すれば、養育費が減額となる場合もあります。

 

お金2020年3月ころから、日本において、新型コロナウィルスの感染者数が急速に増加するようになり、4月7日、東京をはじめとする7都府県に緊急事態宣言が発令されました。

その後、緊急事態宣言は全国に広がり、国民は不要不急の外出を自粛するように求められるようになりました。

感染予防のため、他人との接触を極力減らすことは一定の効果があると思われますが、その反面、人々は行動の自由を奪われ、自宅にとどまることを余儀なくされるようになりました。

その結果、多くの企業で業績が悪化し、いわゆる「コロナ倒産」が増加しています。

また、倒産までいかなくても、自宅待機や給与カットによって、収入が減少する方が多くいます。

このような状況を背景として、当事務所では養育費の支払いのトラブルについての相談が増加しています。

そこで、コロナの影響と養育費の問題について、解説いたします。

養育費とは

養育費とは、子どもが社会人として独立自活ができるまでに必要とされる費用です。

養育費の内容としては、子の衣食住の為の費用・健康保持のための医療費・教育費が含まれます。

養育費については、離婚の際に、その額や終期について、離婚協議書(公正証書)や離婚調停において、具体的に取り決めをしていることがあります。

このような場合、いくら新型コロナウィルスの影響とは言え、養育費の不払いがあるとトラブルに発展することが予想されます。

また、特に取り決めをしていない場合であっても、これまで継続して支払われていた養育費が支払われなくなると、トラブルに発展するケースがあるでしょう。

養育費についての基本的な説明について、くわしくはこちらのページをご覧ください。

 

 

養育費を減免できる場合

養育費の支払いは、通常長期間に及びます。

その間に、お互いの経済的事情が大きく変わることもあります。

このように事情が大きく変化した場合(これを「事情変更」といいます。)には、養育費の増額や減額が認められます。

では、どのような場合に事情変更が認められるのか

増額できる場合

増額できるのは、次のような場合が考えられます。

  • 相手方が成功して大幅に所得が上がった
  • 子どもが難病にかかり、高額な医療費が必要となった
  • 権利者側が職を失い、所得がなくなった

減額できる場合

他方、減額できるのは、次のような場合が考えられます。

  • 相手方(権利者側)が再婚して、子どもを再婚相手の養子にした
  • 会社をリストラされて職を失い、再就職もできない
  • 病気にかかって賃金が大幅に減少している

あくまで参考であり、事情変更が認められるかはケース・バイ・ケースです。

 

 

コロナによる収入減少はどうか

減給収入の減少については、一時的なものではなく、継続的に減少が見込まれ、かつ、それが自分の意思に基づくものではない場合、事情変更に該当し、養育費の減免が認められる可能性があると考えます。

例えば、前年の年収が 480万円(月額 40万円)だったとします。

新型コロナウィルスの影響で、1ヶ月間自宅待機となり、その月は60%の休業手当を得ている場合、その月の収入は 24万円となります。

しかし、自宅待機が1ヶ月だけである場合、他の月は月額 40万円であれば、年収は 464万円です。

このようなケースでは、減収が一時的なものでしかなく、養育費の減額は認められないと考えます。

また、例えば、解雇ではなく、自発的に会社を辞めて、意図的に再就職しない場合、稼働能力があるのに収入を得ていないこととなります。

このような場合も、養育費の減免は認められないでしょう。

他方、新型コロナウィルスの影響で、企業の業績が悪化して整理解雇され、再就職しようとしても職が見つからない場合、事情変更に該当すると考えます。

 

 

変更後の養育費の適正額は?

弁護士養育費を減免できるとして、その適正額は基本的には双方の見込みの収入をベースに算定することとなります。

養育費の算定方法について、くわしくはこちらのページをご覧ください。

 

 

養育費の変更の注意点

①事情変更の要件該当性の判断が難しい

判決養育費の減免が認められるか否かは、法令や過去の裁判例を踏まえて、個別に具体的な状況によって判断しなければなりません。

そのため、素人の方が自分自身で判断するのは難しいと思われます。

可能であれば、離婚事件に精通した専門家に助言を求めることをお勧めいたします。

 

②適正額の判断が難しい

電卓養育費の適正額の算出は、算定表という早見表があります。

算定表はこちらページをご覧ください。

しかし、算定表を使用する前提として、双方の見込み収入を適切に判断しなければならず、素人の方は困難な場合があります。

特に、減収後の見込み収入についての判断は決して簡単ではないでしょう。

また、算定表はあくまで基本的な算出方法であり、特別支出等については考慮されていません。

そのため、安易に算定表に当てはめるのではなく、専門家に相談の上、適正額を算出してもらうことをお勧めいたします。

 

③変更の時点について

手紙養育費の変更は、過去に遡ってはできません。

そのため、養育費の変更の調停を申立てるか、専門家に依頼して内容証明郵便等で適切に減免の意思を通知しておくべきです。

 

④交渉が難航する可能性がある

養育費は、毎月の費用であり、支払う側にとっても、もらう側にとっても、重要な事項です。

そのため、当事者同士の話し合いでは解決しない可能性があります。

このよう場合、養育費の変更の調停で解決するという方法があります。

しかし、調停は一般に解決まで長期間を要し、多大な労力を伴うことがあります。

そのため、まずは専門家にご相談の上、具体的な状況に応じた適切な方法で進めていかれることをお勧めしています。

 

 

まとめ

新型コロナウィルスのパンデミックは、現在生存している日本人のほとんどが経験したことがない未曾有の非常事態です。

そのため、養育費の支払いにも多大な影響を及ぼしています。

他方で、社会が混乱している状況だからこそ、家族間のトラブルは早期に解決すべきです。

そのため、離婚専門の弁護士に具体的な状況を伝えて、適確なアドバイスを受けるようにされてください。

当事務所では、離婚事件チームに所属する弁護士が養育費について親身になってご相談に応じております。

ご相談についてはこちらをご覧ください。

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