別居前の親族への送金は財産分与の対象?

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

 

私は現在妻と離婚協議中なのですが、私が同居中に父へ送金した250万円を財産分与に含めるかどうかでもめています。

というのは、この250万円は、私から私の父への贈与であって、夫婦の財産を減少させようと思って行ったものではありません。
そのことは妻も了承していました。

にもかかわらず、離婚協議が始まると、これは財産分与に含めるべきと妻は主張してきました。
この250万円はどのように扱えばよいのですか?

弁護士の回答

この問題に弁護士がお答えします。

財産分与における原則と例外

計算財産分与の対象となるのは、原則として基準時に存在する夫婦の共有財産です。もっとも、基準時に存在しない財産であっても、それが持ち出しといえる場合は財産分与の対象になります。

 

過去の裁判例

親族への送金について、横浜家庭裁判所は、送金時期等に照らし、夫婦の共有財産を減少させることを目的としたものではない場合は、財産分与の持ち戻しをしないという判断を下しました。

具体的な事情は以下のとおりです。

①夫は、平成22年12月頃、夫の父に対し、250万円を送金した(別居の2年前)。
②この送金は、夫の祖父の相続にあたり、相続人間で紛争になってしまい、夫の父が遺産を受けとることができなかったため、同人を安心させるために行ったものであった。
③妻は、夫の母から「返還する。」と言われていたと主張したが、その確たる証拠はなかった。

裁判官

裁判所は、以上の事実経緯に照らし、250万円の送金は、夫が夫婦共有財産を減少させる目的で贈与したものとはいい難いとして、財産分与の対象から除外することとしました。

ポイント

弁護士本村安宏画像一定のまとまった金額の動きがあった場合、その目的がどうであったかは当事者の内心に関わるため、客観的な周辺事情を特定していかなければなりません。

少なくとも特定しなければならないのは、送金額、送金先、送金時期です。

上記例では、送金額、送金先について特定できます。おそらく、夫の親族間で祖父の相続が発生していたこと、相続人間で揉めていたことも客観的に明らかにすることができたでしょう(相続の発生は祖父の戸籍をみれば死亡が確認できますし、遺産分割調停がなされていれば、その事実自体が紛争状態であったことを裏付けますし、そうでなくとも、父が遺産を取得できなかったことは遺産分割協議書を確認すればわかります。)。

送金時期については、別居の2年前ですから、まだ夫婦間で本格的に離婚の話が出ていない、仮に出ていたとしても煮詰まっていなかったでしょうから、財産を減少させようと考えるには時期が空きすぎています。

以上に鑑みれば、裁判所の判断も不合理とはいえません。

 

 

相談者の場合

送金の時期や送金理由を考慮する必要があります。離婚協議の直前であったり、送金を受けた親族が「返金する」と言っていたことがメールなどで残っていたりした場合は、夫婦の共有財産として持ち戻さなければならない可能性があります。

周辺事情を詳しく確認しておかなければなりません。

 

 

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