離婚の年金分割、3号分割より合意分割が有利?【弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者・3級ファイナンシャルプランナー

弁護士の回答

年金分割を請求する方にとって、合意分割をした方が有利な場合がほとんどですが、3号分割をした方がお得な場合もあります。

 

年金分割とは

年金分割年金分割とは、離婚する際、夫婦が加入していた厚生年金・共済年金の保険料給付実績のうち、報酬比例部分(基礎年金部分は対象外とされています)について、多い方(多くは夫)から少ない方(多くは妻)へ分割する制度です。

年金分割には合意分割と3号分割の2つがあります。

年金分割の制度について、詳しくはこちらのページをご覧ください。

 

 

合意分割と3号分割の違い

合意分割を行ったときと、3号分割を行ったときでは、分割される年金保険料の払込記録の範囲が異なります。

合意分割では、婚姻期間中全体の厚生年金の年金保険料の払込記録について分割される一方、3号分割の場合に分割されるのは、平成20年4月分以降の国民年金第3号被保険者(厚生年金の被保険者、共済組合員の被扶養配偶者であって、20歳以上60歳未満の人を指します。)であった期間中の厚生年金の年金保険料の払込記録に限られます。

つまり、合意分割と3号分割の違いはこのようになります。

合意分割と3号分割の違い
合意分割
婚姻期間全体について厚生年金の保険料の納付記録が分割される
3号分割

平成20年4月以降に被扶養配偶者であった期間の厚生年金の保険料の納付記録しか分割されない

このような分割範囲の違いがあるため、離婚に際し年金分割を求める側の配偶者は、基本的には、3号分割ではなく合意分割を選択したほうが有利であるといえます。

もっとも、年金分割を請求する方にとって3号分割をした方が有利になる場合もあります。

年金分割の対象となるものについては、こちらをご覧ください。

3号分割の方が有利な場合

3号分割をした方が有利な場合とは、被扶養配偶者であった期間が主に平成20年4月であって、婚姻期間中に被扶養配偶者でなかった時期の収入が相手方配偶者よりも高額であったような場合です。

例えば、以下の①から③の条件を備えている女性の方は、3号分割をした方が有利であるといえるでしょう。

  1. ① 平成21年4月に婚姻し、平成23年4月に子供が生まれるまで、夫婦共働きであった
  2. ② 共働きの時期の収入は妻の方が高額であった
  3. ③ 子供が生まれて以降、現在に至るまでずっと夫の被扶養配偶者となっている

 

3号分割と合意分割で同じ場合

年金以下の①②の条件を2つとも備えている場合、3号分割をした場合と合意分割をした場合で、同じ結果となることもあります。

  1. ① 婚姻日が平成20年4月1日以降
  2. ② 婚姻期間中ずっと一方配偶者が他方配偶者の被扶養配偶者であったという場合

このような場合は、3号分割をしても合意分割をしても、将来もらえる年金額に違いは生じません。

 

 

年金分割の方法

合意分割をする

上記のように、年金分割を請求する方にとって、必ずしも合意分割が最善の方法であるとは限りません。

このことを踏まえ、年金分割を請求する場合にどうすべきかというと、仮に3号分割をした方が有利な場合であっても、合意分割を行うという選択には、実は合理的な面があります。

合意分割の合理的な面

3号分割をした方が有利である場合でも、その有利となる払込記録の額が小さいため、将来もらえる年金額への影響が微小であることがほとんどである上、仮にその額が大きい場合であれば、年金分割を請求される側の配偶者が合意分割を求めてくる可能性が考えられるからです。

そのため、年金分割を請求する際には、合意分割を行うというのが一般的となっています。

 

3号分割をする

年金分割を請求する際に3号分割の方が有利であるならば、3号分割を請求したいと考えるのもまた合理的な選択です。

3号分割の合理的な面
3号分割を請求する際の手続は、合意分割に比べて簡素であることから、分割対象となる払込記録の範囲という点以外にも3号分割を選択するメリットはあります。

3号分割についても検討される方は、まず年金事務所を訪ね、自分が合意分割を請求したほうが得になるのか、それとも3号分割を請求したほうが得になるのかを調べてもらうのをお勧めします。

年金分割を合意分割で行う場合には、公証役場が関与する書面(公正証書や私署証書)での合意書が必要な場合があります。

当事務所は、年金分割の合意書のサンプルをホームページに掲載しております。

無料でダウンロード可能ですのでご活用ください。

 

合意分割の注意点

合意分割が有利な場合、注意点が一つあります。

それは、相手が同意してくれない可能性があるということです。

3号分割は相手の協力なしに独りで進められるのに対し、合意分割は相手の協力が必要となります。

相手が同意してくれない場合、裁判等の法的手続きによって、分割をすることができますが、裁判等は長年月を要することが多いので、大きな負担となります。

相手が同意してくれない場合、年金分割の制度に対する誤解があったり、感情的になっていたりすることが原因として考えられます。

このような場合、専門家に間に入ってもらうことで、年金分割を進めることが可能になる場合もあります。

 

まとめ

弁護士以上、年金分割の合意分割と3号分割の関係について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。

年金分割は、通常は合意分割を利用することが多いのですが、場合によっては3号分割の方がよい場合もあります。

合意分割については、相手方が同意してくれない場合、長期化するおそれがあります。

長期化を避けるためには、一度、専門家に相談されることをお勧めします。

 

 

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