個人事業主で会社勤めもしている場合、婚姻費用の計算方法は?
夫は、事業を営んでいますが、別に会社勤めもしています。
確定申告書をみると、事業の所得が 200万円(売上は 500万円)、給与は 800万円のようです。
この場合、算定表の相手の収入はどの額の部分を見たら良いですか?
給与を事業所得に換算して算定表にあてはめます。
このとき、事業収入のみしかない場合と異なり、社会保険料控除の額を控除しませんので、注意が必要です。
この問題について、婚姻費用の問題に詳しい当事務所の弁護士が解説いたします。
算定表とは
そもそも算定表とは、婚姻費用の額について算定する上での一般的な基準として裁判所が作成しているものをいいます。
婚姻費用算定表はこちらをご覧ください。
婚姻費用を請求できる側(収入の少ない側)が権利者、婚姻費用の分担を求められる側が義務者となります。
算定表では権利者の年収(税込)が縦軸、義務者の年収(税込)が横軸となっています。
そして、権利者義務者のそれぞれに給与所得者の場合と自営業者の場合の年収の2つの欄があります。
事業所得と給与がある場合の収入認定方法について
どのような計算で算定表にあてはめるかを簡単に解説いたします。
お手元に確定申告書をご準備ください。
ここでのポイントは以下の3つです。
- ① 社会保険料控除をひくこと
- ② 支払いがない専従者給与を加えること
- ③ 青色申告特別控除を加えること
事業収入しかない場合
事業収入しかない場合、まず見るべきは、確定申告書の「所得金額」の欄の合計金額です。
そこから、「所得から差し引かれる金額」のなかの社会保険料控除のみを控除します。
そして、実際に支払いがなされていない「その他」の欄の専従者給与(控除)額の合計額、青色申告特別控除額を加算します。
給与と事業収入が両方ある場合
算定表をご覧ください。
すると、給与の 800万円に相当する事業所得は 601万円です。
したがって、事業所得が 601万円あると擬制することになります。
事例では純粋な事業所得が 200万円、擬制した事業所得が 601万円の合計801万円が事業所得ということになります。
では、そこに上記の3つのポイントをあてはめて計算すれば良いのでしょうか?
そのような計算では適切な婚姻費用はもらえませんのでご注意ください。
②の支払いがない専従者給与を加えることと、③の青色申告特別控除を加えることは、そのとおりですが、給与と事業収入がある場合、①の社会保険料控除の額をひくことは行いません。
なぜなら、確定申告書中の社会保険料控除は、厚生年金保険料や健保組合保険料がその内訳であり、給与収入がある場合には既に給与から源泉徴収されているため、これを控除すると、二重に控除することになるからです。
このように、事業収入と給与がある場合には、少し特殊な計算が必要になります。
ご自身や配偶者がこれに該当する場合、適切な額の算定ができていないことが多々ありますので、この問題離婚問題や婚姻費用に詳しい弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
婚姻費用についての詳しい説明はこちらをごらんください。
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