養育費を払わないクズ旦那、どうすればいいですか?【弁護士解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  保有資格 / 弁護士


弁護士の回答

養育費を支払ってくれない場合、法的な手続きを駆使すれば、強制的に回収することが可能です。

養育費についての質問です。

私は、夫からDV被害に遭っていたので、子供と実家に逃げ帰り、夫と離婚しました。

離婚に際し、養育費の額等、何も取り決めは行いませんでした。

夫のことは怖かったものの、生活も苦しいため、何度か養育費を支払ってほしいとお願いしましたが、完全に無視されています。

あまりしつこく言うと、また、暴力を振るわれるかもしれず、怖くて、それ以上は何もできません。

私の元夫は、本当に、クズだと思います。

このようなクズな元夫から、養育費をとることはできるのでしょうか?

 

養育費とは

養育費とは、養育費の権利者(多くは母親)が養育費の義務者(多くは父親)に対して請求する子供のための生活費です。

父母は、別居・離婚後も、未成熟子に対して、扶養義務を負います(民法877条1項)ので、この扶養義務に基づいて、義務者は、権利者に、子供の生活費を支払う必要があります。

参考:民法|e-Gov法令検索

この義務は、法律上の親子関係に基づいて生じる義務なので、親権や同居の有無には関わりません。

また、扶養義務の程度は、義務者(通常父親)と同程度の生活を子供に与えなければならないと考えられています(これを「生活保持義務」といいます。)。

わかりやすく言えば、同居しない親であっても、子供が自分と同レベルの生活を送ることができるだけの生活費を渡す義務があるということです。

したがって、上記の相談事例の夫にも、養育費の支払義務があります。

養育費は、父母の収入に、子供の年齢の指数をあてはめて計算されます。

具体的には、大人を100とした場合に、0~14歳の子の生活費指数を62、15歳~19歳の生活費指数を85とみなして計算されますが、計算式は非常に複雑です。

デイライトでは、双方の収入と子供の年齢と数を入力することで、裁判所が使う計算式に基づいた計算が可能なシミュレーターを用意しておりますので、そちらも参考にされてください。

養育費計算シミュレーター

このシミュレーターを利用すれば、養育費の目安が誰でも簡単に計算可能です。

もっとも、養育費は幅のある概念です。

計算式は一つの目安であり、その前後1~2万円は幅があると考えていただくと良いでしょう。

家庭裁判所のHPに算定表がありますが、それを見ていただければ、例えば「2~4万円」「4~6万円」「6~8万円」等と幅があるというのがお分かりいただけると思います。

参考:養育費・婚姻費用算定表|裁判所

また、養育費の詳細は、こちらもご参照ください。

 

 

養育費を支払ってもらえないときの対処法

養育費の目安が計算できたとしても、それを支払ってもらうまでにはまだハードルがあります。

養育費の支払義務があっても、実際に養育費を支払ってもらえないときは、以下のような対処法があります。

養育費を支払ってもらえないときの対処法

①協議が可能であれば話し合う

まず、はじめに、協議(=話し合い)が可能かを見極めましょう。

具体的には、養育費を支払ってほしい旨をメール等で伝えて、そのレスポンスで見極めることになります。

全く支払う意思がないのか、支払う意思はあるが金額が問題になるのかを見極めることが大切です。

当事者同士の協議では全く支払う意思がなかったという場合でも、法律の専門家である弁護士が代理人についたうえで、代理交渉を行えば、協議がまとまるという事案も多々ありますので、弁護士をつけて養育費を請求することも検討しても良いでしょう。

仮に、協議で支払ってもらえるということになった場合、口約束では心もとないですし、いつ反故にされるか分かりません。

そこで、合意を形に残すために、養育費の協議書を交わすことを推奨いたします。弁護士をつけての代理交渉の場合は、弁護士は漏れなく、養育費の協議書を交わすはずです。

養育費の協議書では、①始期(いつから)、②終期(いつまで)、③一人あたりの月額、④特別の支出(病気、大学進学等)があった場合の費用分担方法等を取り決めることが一般的です。

養育費は、長期に渡って支払われるものです。

そのため、滞納された場合に、回収しやすくするという観点から、公正証書にすることも有用です。

公正証書ではない養育費の協議書の場合には、滞納がある場合、滞納額を確定するための裁判を行い、それに基づいて強制執行を行う必要があります。

これに対し、適切な公正証書であれば、基本的に別に裁判を起こさずに強制執行することが可能です。

※強制執行認諾文言という文章を記載する必要があります。

 

②養育費の調停・審判を申し立てる

では、当事者同士の協議で合意ができず、あるいは、弁護士をつけての代理交渉でも合意ができなかった場合、どうすれば良いのでしょうか。

その場合は、家庭裁判所を使うことが可能です。

具体的には、養育費の調停・審判を申立てることになります。

養育費の調停は、離婚後の紛争を解決するために家庭裁判所が用意している調停の一形態です。

調停というのは、わかりやすくいえば、家庭裁判所に間に入ってもらう話し合いのことです。

「いくら家庭裁判所に間に入ってもらっても、うちの元夫は本当にクズで、話し合いに応じるような人ではないです。」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

その場合も、大丈夫です!

養育費の調停の特徴として、話し合いが合意に達しなかった(=調停不成立)場合に、自動的に審判に移行します。

審判というのは、家庭裁判所の裁判官が、判決のような形で、強制的に、金額を決めてくれる手続きのことです。

養育費の調停は、不成立になった場合も、裁判官が審判で金額を定めてくれますので、話し合いに全く応じないような人を相手とする場合でも非常に有効な手段と言えます。

調停は必ずしも弁護士をつけずに行うことは可能です。

しかし、調停を進行する調停委員会は、調停委員(男性1名と女性1名)と裁判官(1名)の3名で構成されています。

裁判官は判断権者ですが、多数の事件を抱えており、普段の調停の現場(調停室)には出てきてくれません。

そこで、背後にいる裁判官に的確に主張を伝える書面を提出する必要があります。

そのような書面の作成を行うのが弁護士の大きな役割の一つになります。

もちろん、審判になると、請求金額についての、より具体的な主張立証が必要になりますので、弁護士をつけた方が的確な主張を裁判官に伝えやすくなるでしょう。

もちろん、費用対効果の問題もあるでしょうから、必ず弁護士を代理人につけなければならないわけではありませんが、調停は、裁判所を使う手続きであり、弁護士はそのプロになります。

少なくとも、弁護士に相談を行い、弁護士を代理人としてつけることも視野に入れたうえで、手続きを進めることを推奨いたします。

詳細はこちらもご参照ください。

 

③弁護士に相談する

協議の段階、調停の段階、いずれも、弁護士に相談することは有用です。

弁護士には、協議の進め方や、調停の対応方法等、プロとしてのノウハウがあります。

弁護士を代理人とする場合はもちろん、費用面でそれが難しいという場合には法律相談を行うだけでも、有用なアドバイスを得ることが可能なはずです。

弁護士は、相談者の現状を踏まえて、最も、相談者にとって利益になることをアドバイスし、いくつかの選択肢を提示しますが、最終的に決めるのは相談者になります。

弁護士の話を聞き、代理活動(代理交渉、調停での代理人対応)を依頼した方が良いと判断されればご依頼いただくのが良いでしょう。

他方、自分で進められるということであれば、協議や調停に進展がある度に、都度相談という形で弁護士を活用し、対応についてアドバイスをもらうという方法も良いでしょう。

弁護士に相談するメリットについては、こちらもください。

 

④それでも養育費を支払ってもらえないときは?

協議書(公正証書)を作成した、または、調停・審判で養育費が定められたにもかかわらず、養育費を支払ってもらえない場合には、強制執行を行うことが可能です。

強制執行とは、裁判所を通じて、養育費の支払義務者の給与や口座を差し押さえる手続きのことです。

通常は、協議書の作成があれば、又は、調停・審判で定められたのであれば、任意で支払う人がほとんどです。

というのも、強制執行になれば、職場にも迷惑がかかりますし、口座が差し押さえられてしまうと、生活に支障がでるからです。

強制執行は、養育費を回収するための最後の強力な手段になります。

ただし、執行裁判所の手続きは煩雑ですので、弁護士に相談したうえで、手続きを進められた方が良いでしょう。

なお、民事執行法の改正後は、裁判所を通じて、相手方の職場や口座情報を調査する手段が用意されておりますので、相手方の給与や財産の情報が少ないという場合にも、回収可能性は高まっています。

一度、弁護士にご相談されると良いでしょう。

強制執行についての詳細は、こちらをご参照ください。

 

 

まとめ

このように、養育費を支払わない元夫からも、法的な手続きを駆使することで、養育費を仕払ってもらえるようにすることは十分可能と言えます。

協議⇒調停⇒審判⇒強制執行と、右に行くほど手続きは煩雑で時間もかかりますが、回収可能性は高まります。

また、事態が複雑化すると裁判所を利用した手続きに進まざるを得なくなることも多く、その分費用の負担も増えるため、お困りの場合は早めに相談するようにしましょう。

当事務所では、離婚事件を専門に扱うチームがあり、養育費について強力にサポートしています。

LINE、Zoomなどを活用したオンライン相談も行っており、全国対応が可能です。

養育費は子供子どものための権利ですから、諦める必要はありません。

養育費が支払われれば、例えば、子供子どもが希望する習い事をさせてあげられるかもしれません。

一人でも多くの方がこの記事を参考に養育費を支払ってもらえるようになれば幸いです。

 

 

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