離婚後に慰謝料などは請求できますか?

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  

 

離婚後の慰謝料請求について

先日、夫の浮気が発覚し言い争いになった後にそのまま夫と離婚をしました。

お互い冷静に話し合える状況ではなかったですし、とりあえず早く縁を切りたいと思ったので、一旦1歳の娘の親権を私とした上ですぐに離婚届を提出しました。

最近、ようやく冷静になったので慰謝料や養育費等の請求をしたいと考えているのですが可能でしょうか。

また、夫からはちゃんと親権を決めなおすべきだと言われているのですが応じなければならないのでしょうか。

 

 

弁護士の回答

離婚後に慰謝料を請求することは可能です。

離婚時に取り決めるべき問題としては、①親権、②養育費、③面会交流、④財産分与、⑤慰謝料、⑥年金分割が挙げられます。

ここで、離婚届を提出して離婚を成立させる場合、①親権さえ定めてさえいれば、その他については話合いがなされていなくても離婚を成立させることは可能です。

したがって、本事案でも妻を親権者とする離婚が成立しています。

しかしながら、本事案のように、しっかりとした話合いをせずに離婚を成立させた場合、後に互いに何らかの請求をすることが考えられます。

 

慰謝料

離婚後に慰謝料を請求することは可能です。

本事案においても、夫の浮気が原因で離婚に至っているので、妻から夫に対し慰謝料請求をすることが考えられます。

ただし、離婚慰謝料については、離婚した時から3年が経過すると時効にかかるため、妻はその期間内に慰謝料の請求をする必要があります。

本事案は、離婚前に発覚した不貞行為について離婚後に慰謝料請求をする事案ですが、離婚後に不貞行為が発覚することも考えられます。

以下、そのほかの各問題についてご説明いたします。

 

親権

本事案において、夫は離婚届提出のために一時的に親権者を妻としただけであり、改めて親権者を設定しなおしたいとの意向です。

しかしながら、一度親権者を定めて離婚が成立した場合、親権者の変更をすることは容易ではありません。

そのため、夫が「ちゃんと話合いができていないから。」との理由で親権者の変更を請求しても、その請求は認められ難いと考えられます。

逆に言えば、親権の獲得をしたい場合には、お互いに暫定的な親権者との認識があったとしても、安易に相手方を親権者とする離婚届の提出をすべきでありません。

親権者の変更について、詳しくは以下のページもご覧ください。

一定の条件で親権を変更する旨の誓約書を交わしていた場合はこちらをご覧ください。

 

 

養育費

離婚後に養育費を請求することは可能です。

養育費の金額については、「改定標準算定表(令和元年版)」が活用されており、簡便に金額を算出できるようになっています(裁判所HP参照)。

引用元:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について

相手方が支払に応じない場合には、養育費請求調停を申し立てることになります。

また、離婚後一定期間が経過している場合、未払分の養育費についても遡って請求できるかという問題が生じ得ますが、当然には未払分の請求が認められるわけではないことに注意が必要です。

 

 

面会交流

離婚後に面会交流を請求することは可能です。

本事案でいうと、親権者でない夫が妻に対し、子との面会交流を求めることが考えられます。

面会交流を実施することは、基本的には子の福祉に適うとされており、裁判所も特別な事情がない限り面会交流の実施を認める傾向にあります。

妻が面会交流に応じない場合や面会交流の条件で争いがある場合には、面会交流調停を申し立てることになります。

 

 

財産分与

離婚後に財産分与を請求することは可能です。

ただし、離婚後2年を経過すると財産分与の請求ができなくなるので注意が必要です(民法768条2項)。

相手方が財産分与に応じない場合には、直ちに財産分与請求調停を申し立てることをお勧めします。

 

 

年金分割

離婚後に年金分割の請求をすることは可能です。

年金分割には、合意分割制度及び3号分割制度の2種類があります。

引用元:離婚時の年金分割|日本年金機構

相手方が年金分割に応じない場合には、年金分割調停を申し立てる必要がありますが、仮に年金分割について争いになった場合でも、裁判所はほとんどの事案で年金分割を認めてくれる傾向にあります。

ただし、年金分割については、原則として離婚をした日の翌日から起算して2年以内に請求をしなければならないという請求期限があることに注意が必要です。

 

 

離婚届の提出は早まらないで!

双方が離婚を望んでいる場合、早期に離婚が成立すること自体は悪いことではないと思います。

しかしながら、しっかりと取り決めをせず離婚だけを先行しても、本事案のように後に争いになることがほとんどです。

遅かれ早かれ紛争が避けられないという状況下において、離婚届の提出を先行したほうがよい場合と、しっかりと条件を定めてから離婚届を提出すべき場合とが立場によって異なります。

本事案をみると、離婚届を出していなければ、妻は夫から婚姻費用をもらいながら慰謝料や財産分与等の話合いができ、仮に争いになったとしても、各問題についてそれぞれ調停や訴訟を起こすのではなく離婚調停でまとめて話し合うことが可能でした(※婚姻費用がもらえるかは夫妻の収入によります。)。

他方で、早期に離婚届を提出したことによって、親権についてはほぼ確実なものとなっており、離婚届を提出したことによるメリットも少なからず発生しています。

離婚届の提出を先行すべきか否かは、婚姻費用が発生するのか、争いになる慰謝料や財産分与等はあるのか、親権についての獲得可能性は高いのか等々の様々な事情を考慮して判断されます。

そのため、離婚届の提出を迷われている方は、専門家の助言を受け適切な時期(自己に有利な時期)を見定めた後に離婚届の提出をすることをお勧めします。

 

 

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