離婚の弁護士費用は誰が払うべきですか?【弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

離婚弁護士費用は誰が払う

離婚の弁護士費用とは?

離婚届離婚は法的な問題です。

したがって、離婚を進めていく場合、様々な弁護士費用が発生することが予想されます。

下表は様々な弁護士費用をまとめたものです。

項目 内容 支払時期
法律相談料 離婚に関する法律相談の費用 相談時:正式な依頼前
着手金 弁護士に依頼する際に発生する費用 依頼時
報酬金 出来高に応じて発生する成功報酬 終了時
実費 事件を処理する上で発生する費用:例えば交通費、切手代、印紙代、コピー代等 終了時 又は 都度

なお、着手金・報酬制ではなく、タイムチャージ(時間制報酬)での依頼を受ける場合も考えられますが、離婚事件のタイムチャージは日本では一般的ではありません。米国ではタイムチャージが一般的です。

離婚弁護士費用の最終的な総額は事件の内容によって全く異なります。

例えば、離婚問題には財産分与というものがありますが、この財産分与の経済的利益が0円の事件もあれば、億単位の事件まであります(億を超えることは滅多にありません。)。

したがって、ケース・バイ・ケースですが、通常の場合、数十万円、経済的利益が高額な場合、数百万円程度となることが想定されます。

 

 

相手に支払わせることができる?

慰謝料イメージでは、このような弁護士費用を相手に支払ってもらうことはできるでしょうか?

結論としては、原則としてできません

例えば、相手の暴力や不倫が原因で離婚することになったとします。

この場合、弁護士に依頼するきっかけをつくったのは相手です。

しかも、弁護士費用は決して安価ではありません。

被害者としては、「相手が悪いのだから、弁護士にかかった費用を支払ってもらいたい」と考えるでしょう。

しかし、日本の法律では、いくら被害者であったとしても、自分の弁護士費用を相手に請求することは当然には認められません。

被害者としては、納得できないと思いますが、このような現実をまずは受け止める必要があります。

 

 

例外的に弁護士費用を支払ってもらえる場合

弁護士費用については、当然に相手に支払ってもらうことはできません。

ただし、これには以下の2つの例外があります。

①慰謝料を裁判で求める場合

慰謝料イメージ相手が不倫をしたため離婚を選択しなければならなくなったなど、相手の非が大きい場合、不法行為に基づく損害賠償(慰謝料など)を請求できることがあります。

この場合、裁判では、損害額の10パーセントを弁護士費用相当額として上乗せすることが実務上認められています。

具体例 不倫による離婚慰謝料として200万円が損害額として認定されるケース

200万円 × 10% = 20万円

弁護士費用相当額として 20万円の上乗せ

離婚だけに限らず、交通事故、傷害事案など、不法行為を理由に損害賠償を行う場合、日本の裁判所は損害額の10パーセントの弁護士費用として認めています。

ただし、これは離婚裁判の判決が出た場合となります。

通常、離婚問題は、示談交渉(協議)を行い、それでも解決が難しい場合に調停へと進みます。

調停でも解決しない場合、裁判となりますが、裁判まで行くようなケースは決して多くありません。

また、裁判となったとしても、途中で和解で終わるケースは多くあります。

和解では、通常、弁護士費用の10パーセントを加算しないことが多いため、加算されるケースはさらに限定的となります。

なお、判決まで行った場合、10パーセントの加算が認められるのはあくまで「不法行為に基づく損害額」に限定されます。

わかりやすくいうと、離婚問題では「慰謝料の認定額」です。

弁護士費用は慰謝料の成功報酬のほか、離婚そのもの成功報酬、財産分与、養育費なども想定されます。

そのため、苦労して判決までもらったとしても、加算が認められるのはほんの一部ということになるでしょう。

具体例 弁護士費用の総額が100万円だった場合

この場合、仮に、慰謝料の弁護士費用の加算額(上記の例で20万円)が認められたとしても、残りの80万円については、依頼者の手出しが必要となります。

100万円  – 20万円 = 80万円

そのため、弁護士費用の加算額のメリットだけを理由に、訴訟を提起して判決をもらうのは、あまり得策とは言えないでしょう。

訴訟は、一般的に長期間を要します。

また、労力が増加するため弁護士への追加の着手金等が想定されるため、依頼者にとっての実益があまりないと思われるからです。

 

②相手との交渉で加算してもらう

交渉相手と交渉して、自分の弁護士費用分を加算してもらうという方法も理屈上は考えられます。

しかし、当然、相手は支払金額を少なくしたいと考えています。

そのため、現実的にはこの方法は難しいと思われます。

例えば、以下のような事情があるケースに限定されるでしょう。

下記のすべてに当てはまる場合
☑相手の有責性が大きい事案(不倫など)
☑相手が離婚を積極的に望んでいる状況(すぐに不倫相手と再婚したいなど)
☑相手に資力がある場合(会社経営者などで資金的に余裕があるなど)

 

 

弁護士費用を支払えないときはどうすればいい?

「弁護士に頼みたくても、その費用の支払いが難しい」というご状況の方は、たくさんいらっしゃるかと思います。

このような場合、以下の方法を検討されてみてはどうでしょうか。

親族等に相談する

ご両親、ご兄弟などのご親族に相談して、弁護士費用を捻出される方は多いです。

弁護士費用の支払いが難しい場合、まずは身内に相談して見られるとよいでしょう。

 

弁護士に相談する

弁護士費用は法律事務所ごとに報酬基準があり、具体的な状況に応じて弁護士が決定し、法律相談時に相談者に見積額が提示されます。

弁護士が提示した見積額は、その弁護士が適正額と判断した金額であるため、依頼者から減額の要望があったとしても、基本的に減額されることはないでしょう。

しかし、状況によっては柔軟に対応してくれる可能性もあります。

例えば、下記のような状況が考えられます。

経済的利益が高額になる見込みがある事案

離婚成立時の財産分与、慰謝料や養育費の額が高額になるようなケースです。

婚姻費用として受け取る金額が高額になる事案
権利者側(多くは女性側)が別居後に受け取る生活費(婚姻費用といいます。)の金額が高額になるケースです。
安定した高収入がある方からの依頼
現在預貯金がなくても、高額な所得がある方から依頼を受ける場合です。

上記のようなケースでは、着手金の分割払いや、着手金を減額して成功報酬を増額するなどの柔軟な対応も想定されます。

もっとも、基本的には着手金や報酬金は一括払いであるため、特殊な状況のみの場合と考えたほうがよいでしょう。

 

 

裁判費用を支払えないときはどうする?

訴訟救助について

訴訟を提起するときに、裁判所に納める費用が払えないときには、訴訟救助(そしょうきゅうじょ)という制度を利用する方法もあります。

ただし、訴訟救助の対象は、現実的には裁判を起こすときに訴状に貼る印紙代です。

印紙代の正確な金額についてはこちらをご覧ください。

引用元:手数料|裁判所

また、この制度は、裁判費用の免除ではなく、裁判費用の一時猶予にすぎません。

そのため、この制度を利用するのは、生活に困窮している方で、訴訟提起する場合に限定されます。

 

 

弁護士に依頼する場合に注意すること

弁護士と依頼者との間の信頼関係はとても重要です。

金銭面でのトラブルはお互いにとってよくありません。

そのため、弁護士へのご依頼を検討されている方は、以下の点にご注意されてください。

見積もりを提示してもらうこと

明瞭会計の法律事務所であれば、法律相談時に弁護士費用の概算を質問すると、見積書を作成して渡してくれると思われます。

「思ったよりも高かった」などの状況を回避するために、しっかりと見積もりを提示してもらうようにされてください。

疑問点や不安な点は必ず確認すること

依頼時だけでなく、依頼後も、成功報酬の額や実費の金額は気になるかと思われます。

このような場合、依頼している弁護士には遠慮せずに質問すべきです。

事件が終了していない状況で、確定した額を伝えることはできないと思われますが、ある程度の見込額は提示してもらえると思います。

 

 

まとめ

以上、離婚の弁護士費用の支払いについて、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。

相手に非があったとしても、自分の弁護士費用を相手に支払わせることは基本的にはできません。

慰謝料請求などを裁判で行う場合は一定程度弁護士費用が加算されることがありますが、限定的な場合となります。

弁護士費用の捻出が難しい場合は、身内や相談担当の弁護士に相談されると良いでしょう。

この記事が離婚問題でお困りの方にとってお役に立てば幸いです。

なお、デイライト法律事務所は離婚分野に圧倒的な実績をもっています。

お近くに離婚に強い弁護士がいない方は、当事務所のオンライン相談をお試しください。

合わせて読みたい
ご相談の流れ

 

 

その他

なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?弁護士選びが重要な理由とは?   

続きを読む