交通事故により夫が他界。加害者に直接思いを伝える方法はある?
刑事裁判には、被害者参加制度という被害者本人やその遺族、被害者の弁護士が裁判に参加する制度があります。
参加制度以外にも被害者が心情等の意見陳述をする制度もあります。
これらの制度を利用することで、加害者に遺族の思いを直接伝えることができます。
被害者参加制度
被害者参加制度とは、刑事事件の被害者やその遺族の人たちが刑事裁判に参加して、加害者である被告人へ直接質問をしたり、刑罰への意見を被害者やその遺族の人たちが述べたりできるものです。
被害者参加制度を利用できる場合
交通事故に関係する刑事事件では、下記のような場合、被害者本人、被害者の配偶者、被害者の両親、子もしくは被害者の兄弟姉妹などが参加制度を利用できます。
- 危険運転致死傷で被害者が死亡したときや怪我をしたとき
- 過失運転致死傷で被害者が死亡したとき、被害者の心身に重大な故障が生じたとき
被害者参加制度を利用できる時期
被害者参加制度は、加害者が起訴された後であれば、いつでも参加の申出をすることができます。
刑事裁判に参加するための手続き
被害者本人やその遺族の人たちが、事件を担当する検察官に刑事裁判への参加を申し出ます。
受け付けた検察官は、被害者らが刑事裁判に参加することについて意見をつけて裁判所に通知します。
裁判所は、被告人やその弁護人の意見を聴取し、犯罪の性質など様々な事情を考慮し、被害者らの参加が相当であるか判断します。
裁判所からの許可が下りた場合、被害者参加人として刑事裁判に参加できます。
被害者参加人が裁判でできること
刑事裁判に参加を認められた被害者参加人は以下のことができます。
1.法廷で検察官の隣などに着席し、裁判に出席する
2.証拠調べの請求や論告・求刑などの検察官の訴訟活動に意見を述べ、説明を求める
3.情状に関する証人を尋問することができる
4.意見を述べるために必要と認められる場合、被告人へ質問できる
5.証拠調べ終了後、事実または法律の適用(いわゆる求刑)について、法廷で意見を述べる
また、被害者が刑事裁判へ参加する際、弁護士に依頼して弁護士によるサポートを受けることができます。
心情等の意見陳述制度
心情等の意見陳述制度とは、被害者やその遺族等の人たちが被害についての気持ちや事件・事故についての意見を法廷で述べてもらうものです。
加害者である被告人が被害者やその遺族等の人たちの気持ちなどを直接聞くことで、被告人の反省を深める効果があります。
意見陳述制度を利用するための手続き
心情等の意見陳述制度を利用したい場合、被害者参加制度同様、事件を担当する検察官に申し出をします。
この意見陳述については、情状証拠として利用することができます。
まとめ
以上のとおり、被害者の方が加害者に直接思いを伝える方法としては、
①被害者参加制度を利用した意見陳述
②心情等の意見陳述制度を利用した意見陳述
の2つの方法があります。
ただし、①の意見陳述については、事実または法律の適用についての意見に限られ、情状証拠ともならないのに対し、②の意見陳述については情状証拠となるという違いがあります。
いずれの制度を利用するかは、専門家である弁護士に相談するなどして、適切な方法を選択すると良いでしょう。
もちろん、両方の制度を利用することも可能です。