弁護士コラム

国民年金は逸失利益の対象?

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

国民年金が、逸失利益の対象として認められた事案(最判平成5年9月21日)

 

事案の概要

交通事故で亡くなってしまった被害者の方が受給していた国民年金が逸失利益にあたるか否か争われた事案です。

 

判旨

年金などのイメージイラスト
「公務員であった者が支給を受ける普通恩給は、当該恩給権者に対して損失補償ないし生活保障を与えることを目的とするものであるとともに、その者の収入に生計を依存している家族に対する関係においても、同一の機能を営むものと認められるから、他人の不法行為により死亡した者の得べかりし普通恩給は、その逸失利益として相続人によりこれを取得するものと解するのが相当である。
そして、国民年金法に基づいて支給される国民年金(老齢年金)もまた、その目的・趣旨は右と同様のものと解されるから、他人の不法行為により死亡した者の得べかりし国民年金は、その逸失利益として相続人が相続によりこれを取得し、加害者に対してその賠償を請求することができるものと解するのが相当である。」

 

補足説明


その他に逸失利益として認められた例

国民年金、厚生年金等、被害者が保険料を拠出しており、家族のための生活保障的な性質をもつものについては逸失利益が認められています。

裁判例では以下のような年金について逸失利益性が認められています。

・国民年金
・老齢厚生年金
・地方公務員の退職年金給付
・国家公務員の退職年金給付
・港湾労働者年金
・農業者年金
・恩給

 

逸失利益として否定された例

無拠出であったり受給権者自身の生計の維持を目的とした給付であったりする場合には、逸失利益性が否定されています。

・遺族厚生年金及び市議会議員共済会の遺族年金
・軍人恩給
・戦傷病者戦没者遺族等援護法に基づく遺族年金
・国民年金法に基づく老齢福祉年金

 

生活費控除率について

手続のイメージイラスト被害者の方が亡くなられた場合、亡くなった被害者の方の生活費は支出しませんから逸失利益の算定にあたっては一定の割合が控除されます。

稼働収入がある場合は稼働収入と同程度の控除割合が認められる例もありますが、年金が唯一の収入である場合には、比較的高い割合での控除される傾向にあります。

 


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