最近、当事務所に多くよせられている相談が、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた結婚式のキャンセルについてです。

結婚式のキャンセルに伴う法律問題について解説するまえに、まずは、新型コロナウイルス感染症と緊急事態宣言の動きを振り返りましょう。

 

緊急事態宣言発令と新しい生活様式

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延を阻止すべく、国は、2020年4月7日に緊急事態宣言を発令しました。

福岡県知事より、県民に対し、生活維持に必要な場合を除いた外出の自粛、同4月14日からは、県内の事業者に対して休業等の要請が出されれました。

その後、2020年5月14日に福岡では緊急事態宣言が解除されましたが、同時に厚生労働省より「新しい生活様式」が提言される等、自粛モードは継続しています。

外国では、再流行がみられる地域もあり、日本でも引き続き警戒は必要なのでやむを得ないものと思われます。

となると、大人数が集まるイベントは開催を自粛するのが望ましいということになります。

そして、一般の人にとっても最も身近な大人数が集まるイベントの一つが、結婚式です。

厚生労働省のホームページを参照すると、冠婚葬祭についても触れてあり、「大人数での会食は避けて」と明記されてあります。これに沿うと、結婚式の披露宴は開催困難でしょう。

そこで、現在、相次いでいるのが、結婚式のキャンセルです。

結婚式は、イベントの性質上、半年〜1年以上前に予約するのが当たり前であり、また、多額の費用がかかることから、新型コロナウイルス感染症の影響が如実にあらわれてしまうイベントになります。

 

 

結婚式のキャンセル料は支払う必要があるのか?

多くの場合、結婚式場の契約には契約書があり、そこにはキャンセル料の条項があると思います。「◯日前までのキャンセルは◯%」というように規定されているのが一般的です。

では、結婚式をキャンセルすることになった場合、キャンセル料は支払う必要があるのでしょうか。

この点、いつ結婚式が予定されていたかによって変わってくるでしょう。

 

緊急事態宣言中の結婚式の場合

●4月7日〜5月14日(※解除は地域ごとに異なります)に結婚式が予定されていた場合

この場合には、キャンセル料は支払わないでよくなる可能性が高いでしょう。

国が、緊急事態宣言を行い、イベントの自粛を要請しているためです。

 

緊急事態宣言解除後の結婚式の場合

この場合には、結婚式場がオープンしているかによっても変わってくるでしょう。

結婚式場がクローズしている場合には、そもそも実施ができないわけですから、キャンセル料はかかりません。

結婚式を予約している側に落ち度がないキャンセルとなるからです。

問題は、結婚式場がオープンしている場合です。

この場合には、結婚式はやろうと思えばできるわけです。

「新しい生活様式」は飽くまでも国からのお願いにとどまり、拘束力はないため、結婚式場も(感染防止に配慮したうえで)オープンすることになんら非はありません。

そのため、キャンセルは、基本的には結婚式を予約している側の都合ということになり、通常の契約書どおりの解除料がかかってしまうのが法的な理屈となります。

このような事態であり、それは厳しいのではないかとも思いますが、法律論としては上記のとおりとなります。

結婚式場によっては独自の配慮を行っており、延期は無料対応していたり、キャンセルは実費精算のみとするところもあるようですが、それは企業努力としてのサービスであり、そのような対応をする義務まではありません。

以上が法律論ですが、感情論としては、結婚式費用は高額であるため、キャンセル料も何十万にものぼることは珍しくなく、非常に厳しいように思います。

「新しい生活様式」を国が提言する以上は、かかる結婚式を行おうとしていた方を救済する制度(たとえば、キャンセル料については結婚式場から国に請求し、件数に応じて一定額を補償することをもって、個人のキャンセル料は免責とする等)があっても良いのではないかというのが個人的な私見です。

 

執筆者

弁護士 竹下龍之介

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士

所属 / 福岡県弁護士会

 

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