Q3. 後継者へ株式や事業用資産を集中させる方法には、どのようなものがありますか?


A. 
①生前贈与や遺言、②会社や後継者による買取り、③会社法の活用、④信託の活用があります。

 

① 生前贈与・遺言について

経営者が所有している自社株式や事業用資産を後継者に集中させる方法としては、後継者への生前贈与や遺言の活用があります。
生前に何の対策もしないまま経営者が死亡すると、相続財産の大半が自社株式や事業用資産である場合、後継者がこれらを集中的に取得することについて他の相続人の同意を得ることが難しくなります。

したがって、経営者の生前に贈与をしたり、遺言を作成するなどして、予め対策を講じるのが有効です。 なお、生前贈与・遺言による株式移転について、くわしくはこちらをごらんください。

 

②会社や後継者による買取り

経営者の死亡によって相続人間に自社株式や事業用資産が分散してしまう場合などには、会社や後継者が、これらを相続人などから買い取るという方法もあります。

【買取資金調達の支援措置】
自社株式の買取資金については、日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫株式会社、商工組合中央金庫から低利で融資を受けることが可能となっています。ただし、後継者による買取りについては、平成20年10月1日に施行された経営承継円滑化法の金融支援措置として、経済産業大臣の認定を受けることが必要です。

 

③会社法の活用

他にも、相続の際に自社株式(議決権)を後継者に集中又は分散を防止する方法として、

・株式の譲渡制限
・相続人に対する売渡請求制度
・種類株式(議決権制限株式など)

といった会社法の制度を活用する方法もあります。

 

【株式の譲渡制限】

定款で、株式を譲渡する場合に会社の承認を必要とすることにより、自社株式の分散を防ぐことができます。 中小企業の多くは、定款に譲渡制限を定めていると考えられていましたが、中小企業庁が平成17年に行った調査では56.7%の会社しか譲渡制限を導入していなかったとの結果が出ています。 新たにこの制度を導入する定款変更を行うには、株主総会の特殊決議(総株主の人数の半数以上で、かつ、 総株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要になります。

 

【売渡請求制度】

これは株式を相続した株主に対して、会社がその売渡しを請求できるようにする、という方法です。

この制度を導入するには、定款変更が必要となり、定款変更のためには株主総会の特別決議(議決権の3分の2以上を有する株主の賛成)が必要です。

また、売渡請求を行う場合にも、その都度、特別決議が必要です。 売渡請求ができる期間は、相続等のあった日から1年以内に限られています。

 

【種類株式(議決権制限株式など)】

株式会社は、普通株式のほかに、種類株式(剰余金の配当、議決権などの権利内容の異なる株式)を発行する ことができますが、自社株式(議決権)の集中や分散防止に活用できるのは、A議決権制限株式、B全部取得条項付株式、C拒否権付株式(黄金株)などです。

 

A 議決権制限株式
議決権制限株式とは、株主総会での議決権の全部又は一部が制限されている株式をいいます。 これを活用することにより、後継者には議決権のある株式を、それ以外の相続人には議決権のない株式を、それぞれ取得させて、後継者に議決権を集中させることが考えられます。

議決権のない株式の株主は、基本的に会社からの配当を期待するしかありませんので、非後継者に納得   してもらうには、優先的に配当を実施するなどの配慮が必要となるでしょう。

 

B全部取得条項付株式
全部取得条項付株式とは、会社が株主総会の特別決議によって、当該種類の株式の全部を取得できるという株式をいいます。

事業承継の場面では、例えば、会社代表者がオーナー会社の場合に、保有する株式を全部取得条項付株式に設定する株主総会の特別決議等を経るとともに、当該全部取得条項付株式をいったん取得した上で、事業承継者についてのみ新株を発行する等の方法で、少数株主を排除することが可能となります。

※このように、全部取得条項付株式は既存株主にとって影響が大きいため、反対株主の株式買い取り請求権や取得対価の規制が設けられています。

 

C拒否権付株式(黄金株)
拒否権付株式とは、一定の事項について、株主総会決議のために、必ず、拒否権付株式の株主総会決議が必要、という株式をいいます。例えば、重要な事項(役員の選任や剰余金の処分等)の決議について、多数の株主による株主総会で可決されても、少数の株主による拒否権付種類株主総会で否決すれば、その議案は最終的に否決されることになります。 このように強い効力を有するため「黄金株」とも言われています。 経営者が、自社株式の大部分を後継者に譲るけれども不安が残る、という場合には、経営者が拒否権付株式 を保有し、後継者の経営に助言を与えられる余地を残しておく、といった活用方法があります。

※拒否権付株式での注意点は、経営者と後継者の間で意見の対立が生ずると、どちらの議案も可決できない状態に陥る危険性があるということです。また、拒否権付株式は強い効力を有するので、万が一にも他の人の手に渡ることのないよう、できれば前経営者の生前に消却するようにしましょう。

 

④信託の活用

信託とは、委託者が受託者に対して、一定の目的にしたがって、信託財産を移転し、財産の管理等に必要な行為をすべきことを委託することです。

事業承継にもこの信託を活用することができます。

例えば、委託者(現経営者)が受託者(信託銀行等)と信託契約を締結し、後継者を配当金の受益者とします。 その後、委託者が受託者に対して議決権行使の指示を出し、受託者は委託者の指図のもと議決権を行使します。信託契約が終了したときに、委託者から受益者へ株券が交付されます。

この方法は、委託者が配当を受け取らないので相続財産上昇を抑えることが可能というメリットがあります。

しかし、受託者となる信託銀行等に対し、報酬を支払う必要があるので注意が必要です。

詳しくは事業承継に詳しい弁護士にご相談ください。

 

 

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