弁護士コラム

WACC(加重平均コスト)とは

ファイナンス
執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

保有資格 / 弁護士・MBA・税理士・エンジェル投資家

グラフWACCとは、加重平均資本コスト(Weighted Average Cost of Capital)のことです。
ファイナンスでは、ワックと呼んでいます。

企業が事業を行うには、資金が必要です。
資金の調達方法は二つです。
一つは、銀行(債権者)からの借り入れです。このような融資をデット(debt)といいます。
もう一つは、投資家(株主)からの投資です。株式投資をエクイティ(equity)といいます。

 

この二つの資金調達にはコスト(資本コストといいます。)が発生します。

すなわち、企業は、銀行に対して、利息を支払わなければなりません。

また、株主に対しては、配当(インカムゲイン)や株式の値上がり益(キャピタルゲイン)というコストが発生します。
したがって、資本コストは、債権者へのコストと株主へのコストを加重平均することによって計算できます。

WACC(加重平均資本コスト)は次の式で算出します。

 

WACC

 

一見、ややこしそうな式ですが、言いたいことは簡単です。
要は、WACCは、株主資本コストと負債コストをそれぞれの時価で加重平均するということです。
負債コストについては、なぜ、実効税率が関係あるかというと、負債の利息は税務上、損金となり、節税効果があるからです。
例えば、借入金利が5%、実効税率が40%の場合、企業の実際の金利負担は3%となります。
5% ×(1 – 40%)= 3%

 

例題:デイライト株式会社の発行済株式数が1万株、株価が100円、借入金が1000万円(利率5%)、株主が年率20%のリターンを求めている場合のWACC
(実効税率を40%とします。)

以上のとおり、上記の事例でのWACCは4.5%となります。
企業は、この4.5%を上回る利益を上げてはじめて、企業価値を高めることができるといえます。

この計算式では、株価を一株あたり100円としています。
しかし、非上場の会社の場合、実務においては株価(企業価値)の算定が問題となります。

 

 


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