遺贈を受けた人は、これを放棄することが可能です。
以下、ご説明いたします。
遺贈とは?
そもそも、遺贈とは、被相続人が遺言によって無償で自己の財産を他人に与える行為のことを言います。
遺言の中で行われる行為であり、遺贈を受ける人の承諾なく、亡くなる人が単独でできる行為です。
遺贈によって財産を受け取る者(受遺者といいます。)は、遺言の効力が発生した時点で、生存または存在していなければなりません。
受遺者は、人だけでなく、法人でもよいとされています。
遺贈の種類
遺贈は、特定の財産を具体的に特定して与える特定遺贈と、財産の全部または一部を一定の割合で遺贈する包括遺贈の2つに大きく分けることができます。
また、条件や期限をつけたり、受遺者に一定の行為を負担させることを内容としたりすることも可能です。
遺贈の放棄
まず、受遺者は、遺言者の死亡後、遺贈の放棄をいつでも行うことができると法律上定められています(民法966条1項)。
遺贈の放棄は、遺言者が死亡した時までさかのぼって効力が発生します。
したがって、遺贈を放棄した場合、遺贈により受遺者に所有権が移転したことは初めから無かったことになります。
遺贈放棄の手続き
遺贈放棄の手続きは、特定遺贈と包括遺贈で異なります。
特定遺贈の放棄は、相手方に対する意思表示により行われ、裁判所での手続を必要としませんが、包括遺贈の放棄は、相続放棄・承認に関する規定が適用され、裁判所での申述が必要になります。
相続放棄・承認に関する規定が適用される結果、包括遺贈を放棄する場合には、受遺者となることを知ったときから3ヶ月以内に、裁判所に対して遺贈の放棄をしなければなりません。
また包括遺贈の場合には、遺贈の一部についての放棄はできないことにも注意が必要です。
特定遺贈 | 包括遺贈 | ||
---|---|---|---|
種類 | 目的物や財産が特定された遺贈 | 遺産の全部または一定割合での遺贈 | |
方式 | 遺言の方式に従う | ||
遺贈(死因贈与)の放棄 | 期間 | いつでも可能 | 熟慮期間3ヶ月 |
放棄の意思表示 | 遺贈義務者や遺言執行者に対して | 家庭裁判所に申述 | |
一部の放棄の可否 | 遺贈の目的物が可分の場合には一部の放棄も可能 | 一部の遺贈の放棄はできない |
遺贈に関する注意点
その他、遺贈に関し、一般的な注意点を補足してご説明いたします。
遺贈の承認・放棄は撤回できない
ひとたび遺贈を承認したり放棄したりすると、その後、これを撤回することはできないので注意が必要です。
遺贈とよく似た死因贈与との違い
遺贈とよく似たものに、死因贈与があります。
遺贈と死因贈与には共通点もありますが、遺贈が単独でできる行為であるのに対し、死因贈与は贈与を受ける者の受諾を要件とする契約であるとの点で違いがあり、それに関連して以下のような相違点があります。
遺贈と死因贈与の相違点
- 死因贈与は遺贈と異なり、遺言の方式に関する規定は準用されない
- 死因贈与には、遺言能力に関する規定も準用されない
遺贈に関する問題は、相続に関する専門的な知識が必要です。
遺言能力について、詳しくはこちらをご覧下さい。
特定の人に自分の財産を遺贈したい場合、あるいは亡くなった人から遺贈を受けてどうしてよいかわからない場合、相続専門の弁護士にご相談することをおすすめします。