離婚の際に婚氏を選択した何年も後に、旧姓に戻ることはできますか?

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

 

旧姓に戻ることはできますか?

離婚の際に、夫婦の姓である「A野」を名乗ることに決めました。

私は、自営で仕事をしているのですが、呼び名が変わることにより生じる支障を考えて、そのようにしたのです。

その後、8年が経ち、年齢の問題で、自営の仕事を辞めることになりました(借金などはありません)。

お墓の関係で、最後は、旧姓に戻りたいと考えています。

今さら旧姓に戻ることは可能なのでしょうか?

 

 

弁護士の回答

家庭裁判所が「やむを得ない事由がある」と判断した場合に限り、許可がおり、旧姓に戻ることができます。

離婚の際、民法上は、原則復氏といって旧姓に戻るのが原則です(民法767条)。

しかし、離婚の日から3ヶ月以内に婚姻時の氏を称する届けを出すことによって、婚姻時の姓を名乗り続けることが可能になります。

 

ご相談の例のような婚姻時の姓を選択してしばらくしてから旧姓に戻す場合、やむを得ない事由が必要となってきます。

以下で、具体的に解説します。

 

 

再び旧姓に戻ることは可能?

離婚届を記入するイメージ画像結論からいうと、一度、婚姻時の姓を名乗り続けることを選択した以上は、自分の判断だけでは旧姓に戻すことは不可能です。

戸籍法107条1項は、「やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。」と規定しています。

すなわち、婚姻時の姓を名乗り続けることを選択した後に旧姓に戻すには、「やむを得ない事由」を主張して、家庭裁判所の許可を得ることが必要なのです。

 

 

 

どのような場合に家庭裁判所の許可がおりる?

家庭裁判所これは、ケースバイケースで、統一した判断がないのが現状ですが、平成15年10月21日の福岡高裁の決定が参考になります。

この決定のなかで、福岡高裁は要旨として、次のように判示しています。

判例 平成15年10月21日の福岡高裁の裁判例

氏は、社会生活をするうえで、個人の同一性を識別するために重要な意義を有しているから、やむを得ない事由がなければ変更できない。

しかし、離婚の際は民法上原則復氏であり、婚氏の継続は例外である。

婚氏の続称については、制度の理解が不十分なものが多く、事後的にも簡単に復氏できると考えている者も少なからずいる。

子どものためやその他の諸事情により、自らの意思を抑えて婚氏を続称する者がいることも社会的事実である。

昨今の姓に対する考え方の変化

これらの事情を考慮すると、婚氏を継続使用した者が婚姻前の氏への変更を求める場合は、一般の氏の変更の場合よりも「やむを得ない事由」の有無の判断は緩やかに解釈するのが相当である。

判決のイメージイラスト近時のこの問題についての審判例を考察すると、概ね、上記の判断基準で許否が判断されていると思われます。

その他の要素として、氏の変更(復氏)の目的が消費者金融等からの借金を可能にするため等の不当な目的がないこと、(単に実家のお墓に入るだけにとどまらず)祭祀継承者になるなどの事情があること、(子がいる場合)その子の氏についての意思等が考慮されることが多いようです。

今回の場合、下記の事情があったことを考慮すると、たとえ8年という期間、婚氏を用いていたとしても、裁判所の判断で旧姓に戻す許可が得られる可能性は十分あるといえるでしょう。

氏の変更(復氏)の事情の具体例
  • 本心としては、離婚の際に復氏したかったが、自営の仕事を継続するために婚氏を続称する決意をしたこと
  • 自営の仕事を辞めることになり、復氏に支障はなくなり、また、仕事を辞めることになったことから社会的にも影響がないこと
  • 借金もなく、不当な目的とはいえないこと

氏の変更が認められた事例については、こちらのページをご覧ください。

 

 

氏の変更許可の申立書のサンプル

氏の変更をするためには家裁に申立書を提出する必要があります。

当事務所では、氏の変更許可の申立書のサンプルを無料でダウンロード可能です。

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