生命保険は財産分与の対象となりますか?【弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA


弁護士の回答

解約返戻金が発生する保険は、財産分与の対象となります。

 

 

財産分与とは

財産分与とは、離婚する際に、夫婦が結婚生活の中で協力して築き上げた財産を公平に分配することをいいます。

財産分与について、詳しくはこちらのページをご覧ください。

 

 

保険が対象となる?

保険(いわゆる積立型の保険)の中には、契約内容によって解約した場合に解約返戻金が発生するものがあります。

解約返戻金が発生する保険は、財産的価値があると評価できるので、財産分与の対象となるのです。

実際には、財産分与の基準時時点での解約返戻金額を分けることになります。

以下、ご相談が多い保険について、解説します。

①死亡保険

死亡したときに保険金が支払われる生命保険には、掛け捨て型と積立型があります。

積立型は、財産分与の対象となります。

②学資保険

学資保険については、子どものためのものだから財産分与の対象とはならないのではないかとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、学資保険も、将来の教育資金に充てるために夫婦共有財産から積み立ててきた保険ですので、仮に裁判等で争うと、基本的には財産分与の対象になると考えられます。

学資保険も子どものために積み立てていたものなので、これを子どものためではなく夫婦で分けるというのは違和感があるのかもしれません。

しかし、学資保険も夫婦で築いた財産の一つですので、財産分与の対象となることに異論はありません。

他方で、この学資保険について、例えば、自身の両親が孫のために毎月の支払いを行なっていた、あるいは全期前納を行なっていたというケースもまま見受けられます。

このような場合は、夫婦で築いた財産とはいえないため、他方配偶者の特有財産とみなす(財産の清算の対象からは外す)などの処理が考えられるでしょう。

参考:「ケーススタディ財産分与の実務」143頁

③損害保険(火災保険・自動車保険・地震保険等)

積立保険と言うと、生命保険や学資保険のイメージが強いと思いますが、損害保険にも積立型のものがあります。

積立型の損害保険の満期返戻金や解約返戻金は、財産分与の対象になると考えられます。

④団体信用保険

団体信用生命保険とは、住宅ローンの債務者が死亡や高度障害状態になったときに備えて、加入する保険で、万一のときは、その保険金でローンの残高が完済されます。

団体信用生命保険は、積立型の保険ではなく、受取人も金融機関となっています。

したがって、基本的には財産分与の対象とはならないと考えられます。

 

 

確認する方法

では、あなたが契約している保険は財産分与の対象となるのでしょうか。

まず、お手持ちの保険証券を確認しましょう。

保険の種類によっては、保険証券に、契約時からの年数に応じた解約返戻金の額が記載されているものがあります。

このような場合には、保険証券から解約返戻金が大体いくらくらいになりそうか、見込額を推定することができます。

もし、保険証券にそのような記載がなかった場合には、解約返戻金の見込額の証明書を保険会社へ連絡して取り寄せましょう

保険会社の担当窓口に連絡して、別居時などの時点を特定し、解約返戻金の見込額の証明書を発行してほしいと伝えると、自宅まで郵送してくれるでしょう。

そのため、今後の見通しを立てるために、解約返戻金の見込額は調べておくべきです。

なお、掛け捨て型の保険や、財産分与の対象としなかった保険についても、離婚後は、受取人を変更したり、契約継続の可否を判断したりする必要が出てきます。

 

 

親がかけてくれた生命保険は財産分与の対象?

ご両親が生命保険の保険料を負担されているケースがあり、この場合、財産分与の対象となるかが問題となります。

ご両親が保険料を負担している場合、その保険は夫婦の財産とは関係がありません。

そのため、財産分与の対象から外れると考えられます。

このように、財産分与の対象とならない財産を「特有財産」といいます

もっとも、特有財産については、それを主張する側に立証責任があると考えられます。

したがって、相手が特有性を否定する場合、当該生命保険の保険料をご両親が支払っていたことについて、立証しなければならないでしょう。

 

婚姻前にかけていた生命保険は対象?

独身時代から生命保険に加入し、婚姻後も保険料を支払っている場合、財産分与の対象となるかが問題となります。

この場合、独身時代に支払った保険料に相当する部分は、特有財産となると考えられます。

このケースは、特有財産であることの立証は難しくないでしょう。

すなわち、保険証券を見れば、契約日や保険料が記載されているので、独身時代に支払った保険料は簡単に計算できます。

問題となるのは、対象となる部分の評価です。

様々な見解がありますが、財産分与の基準時の解約返戻金から婚姻時の解約返戻金を控除するという手法を取る裁判例もあります。

具体例

財産分与の基準時(通常別居時)の解約返戻金を500万円、婚姻時に仮に解約した場合の返戻金が200万円の場合、財産分与の対象は300万円となります。

500万円 − 200万円 = 300万円

 

 

離婚協議書の書き方

生命保険については、遺言などと異なり、離婚協議書の中で、個別に明記することは通常ありません。

生命保険は基準時における解約返戻金の額がわかっているので、それを他の財産と合わせて、調整するのが簡便であるからです。

具体例

夫名義の財産:預貯金500万円、生命保険の解約返戻金300万円、株式200万円 ⇒ 合計1000万円
妻名義の財産:預貯金250万円、生命保険の解約返戻金250万円 ⇒ 合計500万円
それぞれが取得すべき価額:(1000万円 + 500万円)× 1/2 = 750万円

上記の場合、夫から妻に対して、250万円を分与することになります。

【条項の記載例】

甲は乙に対し、財産分与として金250円の支払義務の存することを認め、これを一括して、□年□月末日限り、乙名義の□銀行□支店の普通預金口座(口座番号:1234567)に振り込む方法により支払う。ただし、振込手数料は甲の負担とする。

なお、学資保険については、離婚後も夫婦のいずれかが(通常は夫)支払いを継続することを合意する場合があります。

このような場合は、その内容を離婚協議書の中に明記すると良いでしょう。

 

まとめ

以上、保険の財産分与該当性について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。

保険の中で、積立型のものについては、財産分与基準時における解約返戻金が財産分与の対象となります。

もっとも、保険には様々な種類のものがあり、何が対象となるのか専門家でなければ判断が難しいと思われます。

また、特有財産の部分があるとその立証の必要も生じます。

さらに、財産分与は対象財産の調査や評価が複雑であるため、素人の方では適切な財産分与を実現することは難しいと考えられます。

そのため、まずは離婚問題を専門とする弁護士にご相談のうえ、調査方法等について助言をもらうことをお勧めいたします。

この記事が財産分与の問題でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。

 

 

 

 

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