弁護士コラム

タイヤの破損に車両保険は使えるか?

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

車両保険とは

車両保険は、任意自動車保険に組み込まれて補償で、偶然な事故又は盗難によって、保険証券記載の自動車(被保険自動車)に生じた損害について、自動車の所有者に保険金が支払われるものです。

 

補償の対象となる事故とは

保険のイメージ画像車両保険の補償の対象となる事故は、衝突、接触、墜落、転覆、物の飛来、物の落下、火災、爆発、台風、洪水、高潮、盗難のほかに、その他の偶然な事故です。

ただし、戦争・地震・噴火・津波・原子力災害等による損害は補償の対象外とされています。

また、保険契約者、被保険者の法定代理人、使用人、父母・配偶者・子の故意や重過失によって生じた損害についても補償の対象外とされています。

車両保険の対象

車両保険の対象は被保険自動車です。車両本体と、本体と部品がナットやねじなどで固定されているもの、備品として装備されている付属品が被保険自動車に含まれ、車両保険でカバーされます。車内に固定したナビゲーションシステムも車両保険の対象になります。

車両保険の対象とならないもの

燃料や洗車用具、車両カバーなどです。

 

車両保険に関する問題

車両保険に関してこのような問題を考えてみましょう。

問題1

自損事故でタイヤのみを破損した場合、タイヤは車両保険の対象になるのでしょうか?

答え
車両保険の条項には、保険金を支払わない場合として
「タイヤ(チューブを含みます)に生じた損傷」
理由は、タイヤは自動車の中で使えば使うほど消耗するものです。タイヤの破損が自然の消耗か保険事故かを判定することが難しいことが理由とされています。

 

問題2

盗難事故でタイヤが盗まれた場合、タイヤは車両保険の対象になるのでしょうか?

答え
盗難による場合には、タイヤは車両保険の対象になることが多いです。
他にも火災が原因で車が壊れた場合や車両と同時に損傷を被った場合も補償されます。これは事故の確認が容易であるからです。

 

約款の規定は例示列挙

任意自動車保険約款に列挙されている事故は例示にすぎません。列挙されていない事故である場合でも、偶然発生した事故であれば補償の対象となります。

とすると、タイヤがいたずらに破損させられた場合、偶然発生した事故であれば車両保険の補償の対象となります。

タイヤ破損のイメージ画像ちなみに偶然発生した事故であることの主張、立証責任について、最高裁判所は「(保険金の請求者は)事故の発生が被保険者の意思に基づかないものであることについて主張・立証すべき責任を負わない」と判断し、保険会社が偶然発生した事故であることの主張、立証責任があると判断しました(最判H18.6.1、最判H18.6.6)。

 

 


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